理系バカと呼ばれ | ナノ
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柳から乾に、氷帝の世にも珍しく希有な才能を持つマネージャーを紹介する。と連絡した。
間違いではないのだが、言い回しが賛美に聞こえかねない。

「今日クラブ活動無かったよね〜?」

当の香奈は、髪の毛を引っ張られた上に樺地が抱えている。完全に逃げられない状況だ。なまじ人体を知っているだけに、虚を突いて逃げ出すおそれがある。
これからどこに連れて行かれるのか、それすら解っていないのだ。学校名を言われても覚えていないので、誰も教えない。

「やぁ、久しぶり香奈。元気そうで良かった。」

額に青筋を浮かべた、恐ろしい笑顔の幸村。散々言って聞かせたのだが、会わない人は覚えない。研究に関係するなら別だが、まだ幸村の能力は知られていないのだ。

「あ、信濃さん。覚えていない事は言わなくていいですから。」

柳生も温和な笑顔だが、どこか薄ら寒い。とりあえず合流したメンバー。香奈は日吉と滝の間に座らされ、問答無用で青学へと向かわされていた。
いつもは研究について、ブツブツと不気味に見える香奈が黙っている。カバンはトランクに放り込まれ、論文も読めないがメールで与えられた難題を解いていたのだ。

「…日吉、香奈黙ってるけど叩かないの?」

「完全に異世界に思考が飛んでいますし、精神的な害はありませんから。」

見た目は相変わらず、破壊力抜群。
青白い顔に、1メートルはゆうに超える長い髪。汗で顔にへばりついていて、とても怖い。
柳曰わく、一本頂戴して測ったところ長さは131センチらしいが…どうでもいい事である。
考える時の癖で、頭をゆらゆらさせているから直視したくない。香奈が気にしない事をいい事に、それぞれ景色を眺めたり眠ったりと現実逃避真っ最中だ。

「このままだと、俺が香奈先輩案内するんですよね…?」

鳳が心底悲痛な声を上げ、助けを求めるが…皆、結局自分が可愛い。妙な事を口走られたら、フォローしなければならないのだ。
香奈を叩くなり、相手に香奈の事を説明するなり。大体決まってはいる。
理系バカと呼ばれても、香奈は小柄な女の子なのだ。体力もそうだが、見た目が華奢すぎて手をとても上げにくい。
何も知らない人が見れば、真田は特に地位が危ない。

「ガンバ、鳳。」

応援どころか、慰めにすらならない。向日は絶対何もしない宣言をしたに等しいのだから。
ちなみに、立海は車が別。リムジン二台で大移動と言うのが、跡部の金銭感覚が間違っている証に思える。香奈が電車を使用しているのは、保護者が昼間寝ているからだ。
代理になる者はいない。

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