理系バカと呼ばれ | ナノ
来て見て触って体験
合宿時の香奈の部屋も凄絶な倉庫のようなものだが、自宅は更に酷い。と氷帝メンバーが忠告をしていたのだが。立海メンバーは後先考えず乗り込んだ。
応対はメイドに一任され、香奈は着替えさせられてパソコン操作を続けていたのだが。ドアを開けた立海メンバーは、部屋を見て見事に固まった。
百聞は一見に如かず、と言うが…。
「…これは無いよな。」
「無いな。異次元と言われた方が納得できる。」
ジャッカルの呟きに、柳が賛同する。生活感の欠片もない、研究の為だけにある部屋。あらゆる生活から切り離されている。
床には焦げた痕もあり、埃一つ無い代わりにネジやよく判らない物体が転がっている。
「香奈、気付いてくれんのぅ。何しとるんじゃ?」
一番慣れている仁王が香奈に近付き、背後から抱き締める。しかし香奈の手はキーボードを叩き続け、客に構いもしない。
作業に熱中しているのだ。
「だぁれ〜?くすぐったいよ〜。」
あれだけ叩かれていた割に痛がらないから、触覚があるか怪しいと践んでいた柳は興味深いとノートに書き記す。人間扱いすらされてもらえない。
「雅治じゃ。忘れてもうたんか?」
「…アメリカにヒトゲノム調べに行ったんじゃ」
完璧に覚えていない、と仁王は香奈の髪を結構な力で引っ張った。かくん、と顔が天井に向き、キーボードを打つ手が止まった。
淡い水色のワンピースが、香奈の不気味さを増大させている。
「…信濃!何なんだその態度は!根性叩き直してくれる!そこに直れ!」
真田の怒声が、仁王以外のメンバーを我に返らせた。柳は現実逃避気味だったのである。しかし、真田が指す先はコードだらけの床。今は、そこまで香奈に厳しくなれない者もいる。
「コードだらけだし、正座したら痛そうだ…。」
「そーっすね。丸井先輩、香奈先輩床で寝てるって話聞きました?」
なるべく直視しないように視線をさまよわせる2人。幸村は怖々と口を開いた。信じたくない。
「…ここの、床で?」
柳生が意識を手放そうとしたが、幸村に足を踏まれて許さない。
だから止めとけって言ったのに。と氷帝メンバーの声が聞こえそうな状況だ。柳は携帯を弄り、香奈を真人間にする会会長である跡部に連絡した。
「跡部か?あぁ。聞かなかった俺達が悪かった事はよく解ったんだが、2人倒れそうだ。」
仁王から髪の毛を引っ張られ、真田に香奈は説教されていた。
真田と香奈、言葉の壁が立ちはだかる事を…立海メンバーはまだ知らない。
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