理系バカと呼ばれ | ナノ
日本国籍です。




体はともかく、髪の毛が凄まじく長い香奈は、洗い方がぞんざいすぎる。
その事を聞いた氷帝メンバーは、口元をひきつらせてとりあえずメイドに頭を洗わせ、忍足が甲斐甲斐しく髪を拭いていたのだが。左耳の裏に、アルファベットと数字の記号を見つけた。

「香奈ちゃん、耳の裏になんや番号あんねんけどどないしたん?」

「私の個体識別ナンバーだよ〜?長太郎君、ファイルとって〜。説明するから〜。」

いいのか?と跡部に尋ねた鳳は許可を受けて、色んな意味で怖い殺人ファイルを香奈に渡した。
香奈が言うには、今はもう無い人体実験の為に生み出された赤ん坊達の1人。生みの親は勿論、遺伝子上の両親すら判らない。
予算の関係で頓挫し、日本に捨てられていたらしく現在の両親がたまたま拾い、父親に妊娠能力が無い事もあって素晴らしくアバウトに育てよう、となった。
耳のナンバーは、生まれて間もなく付けられたらしいので、兄弟が居ないのは当然。
赤ん坊達が生きているかも判らないし、興味も無い。既に組織は解体されているようだ。と話したところ涙ぐむ者も居た。

「ほんまもんの悲しい誕生秘話やん…。」

「香奈先輩、すいません。言い辛い事聞いてしまって…軽率でした。」

鳳が肩を落とし、ハンカチで涙を拭うが香奈はきょとんとしていた。
ファイルを出さなければいけないぐらいに、どうでもいい事としてしか扱っていない。
要は、覚えていないのだ。聞かれたら答えなさい、と親に言われたから説明しただけ。

「終わった事みたいだし〜気にする事なの〜?」

こいつはそういう奴だったな。と思い返すメンバー。他人様のプライバシーも平然と聞く。跡部や鳳が被害にあったのだが。

「香奈は、いたら会いたくないの?」

「全然〜。人間の体はアミノさ」

ノート改め、日吉必携が唸った。
俺の涙と感動を返せと声を大にして、懇々と説教がまた始まる。

「少しは気にしろ!香奈にセンチメンタルなんか期待した俺様もバカだったけどな!」

「センチメートル?」

「違います!感傷的な感情の事です!香奈先輩はどれだけ理系な耳してるんですか!?」

いやそんな事言われても。と反論したいのは山々だが許されない。怒濤のように説教が続き、下らない揚げ足を取るとバシバシ叩かれていた。
見えないものを信じない、リアリストだが道徳も倫理観も人間的良心も無い、リアリズム。やられそうだったからやり返そうなどとは思わない。面倒だから。散々説教をされたのだが、全く懲りていないのだ。

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