理系バカと呼ばれ | ナノ
症例は、覚える。
空気を読まない事と、天然じみた発言と…要はマネージャーの仕事だけは完璧にやっていた香奈。
合宿が終わり、あって無きが如しと思われていた白嶺はマネージャー失格、と体よく追い払われる事になった。
「香奈。あの目覚ましやるんじゃなかったか?」
「あ、真田さん。目覚まし〜。」
無骨な鉄の箱、中身のいじり方は柳がしっかりノートに残している。仕組みも説明されたが、専門用語を連発されて諦めていた。
しかし、香奈の無精を直す事には協力すると、立海メンバーは満場一致で可決されている。目も当てられない惨状だからだ。
「うむ、有り難く赤也に使わせて貰う。」
「えぇっ!?マジで俺ッスか!?」
立海のみならず、氷帝メンバーさえも恐怖のどん底に叩き落とした悪夢の目覚まし。赤也には拷問に等しいだろう。
「信濃さん、幸村君をどうか、お願いします。」
「誰それ〜?」
柳生の切なる願いに、香奈はさらりと覚える気が無い意思表示をする。仁王が思わずひっぱたいて説明をしていた。
「ギラン・バレー症候群に似た症状のウチの部長じゃ。」
「調べないと解んな〜い。何でも治せないし〜。」
そんな真似をされたら、世の中の権力者達がこぞって殺到する。やりかねないのが恐ろしいが。
「跡部…信濃の根性、一から叩き直してくれよう。あの性根は曲がりきっておる。」
「真田、解ってくれたか。香奈の生活も考えも俺には理解出来ねぇ。」
いや思いっきり金銭感覚似てるじゃねぇか、と言いたいメンバー。使い道は全く違うのだが、どちらにせよ惜しまない庶民の敵。
「プロフェッサー・ブラウンに連絡したら〜場所貸してくれるって〜。ドクタークリューガーも協力してくれるって〜。」
携帯を見ながら、何でもない事のように言ってしまうのだ。そんな固有名詞を出されても、誰が誰だか解らないのだが。
「侑士、ツッコミ入れるなよ。長々と経歴語られたら俺泣くから。」
「おう。…香奈ちゃんが覚えとるんやしとりあえずビッグな人なんやと思うとくわ。」
移民の国、アメリカ。名字も国籍が謎だらけで、ドイツだフランスだロシアだとごちゃ混ぜ。その道の第一人者でも、同姓同名は珍しくない。
「それではな。また、電話をするだろう。」
「イヤだけど信濃を真人間にする協力はすっから…ジャッカルが!」
「丸井、お前もやれよ!」
そうして一時解散。香奈を真人間にする会が発足したある日。
数日後、香奈はアメリカに旅立った。幸村の名前をロクに覚えていないが、カバーはしている。
アメリカの方々が。
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