理系バカと呼ばれ | ナノ
氷帝テレビショッピング




細かい作業を何度も繰り返して、真田の怒声目覚ましは完成した。

「出来た〜!」

にっこりと笑い、目覚ましには見えない鉄の箱を眺める香奈。大層嬉しそうな可愛らしい笑みなのだが、作ったものがマズい。

「暑苦しい朝を皆様にご提供します、王者立海ビッグ3、皇帝と称えられる鬼副部長真田弦一郎の怒声で爽やかなお目覚めを。」

「今なら特別価格でお届けします。いつも寝過ごしそうになるあなたへ。って何やねん仁王!どんなテレビショッピングや!嫌やこないな目覚まし!時計やないんやで!?目覚まし機能しかあらへんがな!」

ベッドに転がって雑誌を読みながら呟いた仁王に、ついノリツッコミをしてしまった忍足。
そのぐらいしないと、この部屋で倒れそうなのだ。それなりに広い筈の部屋は、香奈の荷物でかなり狭い。下手をすると頭をぶつけかねないのだ。

「真田さんに渡しておしまい〜。さ、論文〜。」

風呂上がり、髪の毛を拭かない香奈だから2人がかりで拭かれて、指定時刻である2時までは長くはない。しかし、無駄な時間は浪費しない。

「さて仁王。昨日は自分が前やったんやから今日は譲りや。」

「昨日思いっきり楽しんどったんはどいつじゃ。」

こんな状況でも、滅多にお目にかかれない大きな胸を楽しみたい2人。
香奈の部屋がリアルな怪談扱いなのに、慣れてきた自分を否定したくなっているのだ。幻想を砕かれても、めげない辺り打たれ強い。しばらく不毛な、品の無い言い争いをしていたが仁王が忍足の勢いに負けた。

「さ、香奈。2時やから寝るで。」

さっと論文を取り上げ、忍足は論文を無造作にパソコンの前に置く。仁王は香奈を抱き上げ、連行。…他校のライバルであるのだが、何故かよく解らない連帯感と息のあった動き。
明日、指にダメージを与えられるのは仁王なのだ。忍足はそれもあって、断固として主張したのである。

「いやー論文とらないで〜。」

じたばたしても、スポーツ少年に敵う筈もなく。がっちりと抱き締められて、寝るしかなかった香奈。
変わらず危ない光景なのだが、色気もへったくれも無い香奈相手に、疚しい事などをしようとは思えない。

「ほっそいなぁ…。」

「侑士君、くすぐったいよ〜。」

耳元に息を吹きかけられても、この程度。ロマンティックやドラマチックな事を期待する事自体が、大いなる誤りだから氷帝メンバーは理解させようとしているのだ。
ただでさえ倫理観が間違い気味なのだから。書いてないならやっていい!と突っ走る。

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