理系バカと呼ばれ | ナノ
皇帝真田怒声目覚まし




悲劇は、翌朝に嵐の如く訪れた。

[起きんかー!!]

真田の声を生々しく再現した、悪夢の目覚ましが合宿所に轟いた。
特に赤也はベッドから落ちる程動揺し、犯人が香奈だと解ると、真田以外の立海レギュラーが憤然と食堂に向かった。そこには朝から正座をさせられて、説教を受ける香奈。
髪の毛がやたらと艶やかでストレートだ。

「だから日が昇っちゃったで済ませんなって何回言わせりゃいいんだ理系バカ!俺様にも我慢の限界はあるんだ!朝っぱらから真田の野郎のバカでかい声聞かされてたまるか!」

加えて電子音とは思えないリアリティ溢れた目覚ましに、跡部と滝と日吉が仁王立ちになって懇々と説教をしている。

「それに髪の毛を見れば一目瞭然ですがお風呂をサボりましたね?作業に夢中になると、香奈先輩は自分の事を一切考えず突っ走るんですから、脳みその二割で構いませんから自分の事を考えて下さい。」

反論の余地も与えず、ひっきりなしにこれでもかと合宿での苦情を言う。

「まだみかんせ」

「香奈、そう言う話じゃないからね。どうせアナログをデジタルに、なんてテレビみたいな事やってたんだろうけど昨日と同じ格好って汚いから。香奈は同じ服標準服しか持ってないって跡部のメイドさんから報告受けてるから。」

香奈の背中しか立海メンバーには見えないが、滝の笑顔と幸村のそれが似通っている気がしていた。
大和撫子風に見える香奈の髪も、真実を知ると百年の恋も霧散する。

「ちなみに面倒くさいからとは言わせねぇ。飯食ったら着替えろ!」

香奈のどこまでも都合の宜しい脳みそ。長々と説教をする事すら馬鹿馬鹿しくなるが、ここで呆れて放り出してはならない。
化粧をきっちりして来た白嶺は、様子に驚いて目を見開いた。昨日は散々比較されてプライドを砕かれたのに、比較される香奈が怒られているのだ。
ざまあみろとしか思えない辺り、おめでたい頭だ。

「おはよーみんな。柳生君…信濃さんがどうかしたの?」

「見ていれば解りますよ。丁寧ですから。」

そんな事も解らないのか、と言わんばかりの柳生だが姿勢は崩さない。

「香奈先輩、百歩譲って4時間睡眠が染み付いている事は看過しますが、徹夜は何回するなと言いましたか?」

朝食になるまで、延々と香奈は説教三昧。食事中も、箸の持ち方からくどくどと言われ続けていた。
マナーは出来るが、持ち方は凄まじく適当。包丁の持ち方も非常識すぎて、今までよく怪我をしなかったと思わせるものだ。
メス捌きは素晴らしく、縫合も完璧と謳われる外科医もこんなもの。

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