理系バカと呼ばれ | ナノ
英語で解る物理学




柳の頼みでもあり、跡部と真田が召集を掛けて日本が世界に誇る科学者による物理学講座が始まった。

『となり、万有引力については証明されました。続きまして物体として認識されている光について…』

英語で流暢に、ご丁寧に図まで書く親切な説明。…香奈にとっては。
既に眠りに落ちている者、理解を放棄している者、とりあえず聞いている者、熱心に聞き入る者と様々だ。

「すいません、信濃さん。何故物理の基礎に相対性理論が出るのですか?」

何となく挙手して、柳生が遮った。
やる気の欠片も見られない格好の香奈だが、教えられているからそうさせるのかもしれない。

『相対性理論は物理の基礎ですよ?』

不思議そうに首を傾げる香奈だが、もっと不思議なのは隣に真田が座っているから眠れない赤也だ。日本語でも、聞き慣れない言葉なのだから。

「柳先輩、そーたいせー理論?ってなンスか?」

「本当にシンプルかつ分かり易く説明すれば引力の話だ。話の流れも間違ってはいないが…普通は知らなくて当たり前だ。」

柳のノートには、香奈が説明した全てが隈無く書かれている。細かい事に割ける時間は無いから、と何度も割愛されているが…それでも何も見ないで、香奈は説明している。
質疑応答の時間まで設け、香奈による物理学講座は制限時間まで続いた。

「大したもんだ、香奈。化学は出来るか?」

『はい。ただしどこを基礎とするか、と言う定義によっては内容が変わります。どうしますか?』

「明日は核について香奈に説明させる。日本語で、な。」

何でまた合宿に来てまで勉強させられなきゃならないんだ。と思う者は少なくなかった。
化学と言っても、丁寧に説明するには時間がかかる。それだけ香奈の知識が深く偏っている、とも言える。向日は化学が得意だと明言していたが、香奈によって自信を粉砕されたのだ。
比べるな、と慰められてはいたが。

『すいません真田さん、これに思い切り、起きろと叫んで頂けますか?』

「構わんが…何に使うのだ?」

『目覚まし時計です。』

録音機に、真田は叫ばされた。翌朝の悲劇を、誰一人として予想しえなかった。香奈の発想はよく解らないからだ。
講座が終わり、メンバー達は半ばぐったりしながら部屋に戻って、風呂を済ませて早々に眠りについた。氷帝メンバーは痛いほど理解している筈の、香奈の無精を忘れ。
その晩、けたたましく様々な工具の音が鳴り響いたがそれすら気にならない程、立海メンバーは深く寝ていた。

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