理系バカと呼ばれ | ナノ
言いたくもなる
翌朝、香奈はきっちり4時間睡眠で起きた。
寝癖や絡みついた髪に頓着せず、合宿の予定表を見て起こさなければならない事を認識したが、人数が人数だ。
いちいち起こしに回る作業は面倒臭いと、即興で拡声器を作った。価値観が明らかにおかしい。
「朝だよ〜起きて〜。」
甲高い少女の声が、合宿所に響き渡った。やる気の無い声が、どこか怖い。
氷帝メンバーはすぐに跳ね起きて、立海メンバーの確認に向かった。
朝からホラーは勘弁してもらいたい。
「…跡部。これは信濃の仕業か?」
「あぁ。」
坐禅で集中していた真田は落ち着き払っているが、それ以外はなかなか爽やかとは言えない寝覚めだ。怒鳴られるより、怖くなる。
朝食で不満を香奈にぶつけた立海メンバーだが、氷帝メンバーは寝ている男の部屋に入らなかっただけ、まだ良かったとそこには触れなかった。
髪の毛を梳いたり顔を洗っていなかったりする無精には、盛大に説教をしていたが。
「跡部、頼みがある。」
「あーん?内容次第だ。」
真田が頼む事は珍しい。特に派手なパフォーマンスを好む跡部にだ。性格的に合わない。
「信濃に、1日英語で会話をしてもらえんか。今日は全日だからな。」
「構わねえ。が、俺様にも一つ条件がある。香奈の体力テストを、立海の連中にさせろ。それなら香奈も頷くだろ。」
「そんな事か。構わん。」
立海メンバーは、ある意味自分の常識を覆させられる知らなくていい世界への、片道切符を握らされた。
「信濃さん、頼み事があるのだが物理の基礎を教えてくれないか?」
「基礎?いいですけど。」
柳も柳で香奈に頼んでいたが、無茶な事だ。日本のカリキュラムではなく、トップクラスの研究者達が言う基礎、と香奈は解釈してしまうのだ。
「香奈!ちょっと来い。」
「はぁい、景吾君どうしたの〜?」
髪を滝に梳かれ、顔を洗って歯磨きしろと言われてから跡部に呼ばれた。
最も小柄な香奈が、ちょろちょろと走り回る。
「英語は、日常会話出来るな?今日1日、英語で話せ。立海の連中に体力テストを許可する。」
「アメリカ英語ならね〜。テストいいの〜?えっと、柳?さんに〜物理教えてって言われたんだけど〜どうしたらいいのかな〜?」
「全員参加、当然今日、英語でやれ。」
『はい、解りました。景吾君。』
切り替えは早いが、科学に関わらなければ発揮されない事。跡部はイギリス英語を使うが、教養はこの面子では随一だ。
「…英語になるといつも早口だな。」
時間が惜しいからだ。
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