理系バカと呼ばれ | ナノ
異次元空間の住人




暫く、聞き耳を立てていた3人を咎めるような跡部の声が廊下に響いた。

「何やってんだてめぇら。香奈の部屋は鉄板入ったドアだぜ?セキュリティも香奈特製、立海は入れっこねぇな。入れたらそれこそ天才だ。樺地。」

「ウス。」

香奈は、天才と言う言葉が嫌いだ。その下の苦難も努力も、否定されるから。
問題児として手を焼かれているぐらいは認識するが、それでいいと肯定されたので開き直っている。
香奈は著しく、芸術に関しての理解がない。選択教科を取らなかった理由でもある。
樺地が連絡番号を入力して跡部は香奈へ声をかけた。

「香奈、返しにきた。」

「開けたよ〜。」

重いドアを樺地が開け、跡部と一緒に3人も便乗して入ったのだが。当然、言葉を失った。
僅かな照明が部屋を照らすが、異様だと気付くには充分な内装。ダンボール箱が重ねられた部屋は床にコードが張り巡らされ、コードと見紛う長い髪の毛が更に怖い。

「ほら。」

「はぁい。何か問題あったら教えてね〜。まだバグは見つかって無いけど〜製品化するらしいよ〜。」

「…完成品と断言しなかった理由はそれか。」

「うん〜。16進数で作ってみたからね〜。」

呆れた跡部に構わず、香奈はUSBメモリを片付けて作業を再開する。
何か工具を使っている、としか5人は認識出来ない。

「風呂は。」

「入ってない〜ぃ?」

跡部の指が鳴り、樺地は問答無用で風呂場に香奈を閉じ込めた。
こんな事もあろうかと、跡部は榊に伝えシャワー室を作らせていたのだ。放り込めば、抵抗が無駄だと知っている香奈は素直に洗う。どう足掻いてもスポーツ少年に敵う体格ではないからだ。

「…何じゃこの部屋。」

「香奈の自宅よりはまだマシだな。ベッドも無けりゃ床にはびっしりコードだらけで、一部だけ避けてあるがコードは全部防水加工してある。常人なら固まって動けなくなっちまう。なぁ樺地?」

「ウス。」

ぎこちなく仁王が口を開くが、これでもレベルは下げてある。どちらも倉庫か何かにしか見えないが。

「香奈はな、一般的な知識がやたら欠けてて自分の世界を作ろうとする紙一重の人間だ。切原、お前の目もかなり危ないぞ。忠告はしてやったからな。行くぞ、樺地。」

「ウス。」

跡部の目も、かなり危ないのだ。即座に樺地の弱点を見抜いた観察眼を持ちながら、科学に生きる。

「…赤也の目も?」

仁王は首をひねるが、切原と丸井は固まっていたので運び出す事にした。長居はしたくない。非現実的な生活空間。

- 30 -


[*前] | [次#]
ページ:






メイン
トップへ