理系バカと呼ばれ | ナノ
作っただけだよ




樺地に運ばれ、香奈は自身の技術の粋を集めたセキュリティの部屋に入った。
香奈は指紋と虹彩で照合して入る。扉は鉄板を仕込み榊も打てる手は打ったのだが防音には至らなかった。廊下から入るには、連絡番号を入力して声紋照合により通話が可能。
氷帝メンバーのみを声紋は登録している。

「パソコンの前にお願い〜足の感覚無いの〜。」

大分、解りやすい言い回しを覚え始めたが偏りはまだまだある。
それにしても、同い年の少年達に説教されて足を痺れさせる、日本を代表する科学者と言うのも情けない話だ。
頼まれた通り、樺地は椅子に座らせてやった。

「有難う。」

無意識なのだが、礼を言う時は香奈が笑う。あまり、機会は無い。

「ウス。」

エアコンを稼働させ、パソコンを起動。
片手でも驚異的なタイピング能力を発揮する香奈は、ひたすら書きかけの論文を入力し続けていた。巻き返しを図る訳ではないが、やりかけは嫌いなのだ。
答えが出ていても更に発想力のある科学者達が、新たに考え出す事を楽しみにしている。

『こんばんはメアリー。ごめんなさい、日本時間。あなたの専門で興味深い例を発見した。ある条件下で、人格が代わるように私は見えたの。えぇ、今はクラブ活動で忙しいからそう思うのでしょう。』

携帯で会話をしながら、二台のパソコンを操る姿は紛れもなく、プロフェッショナルだ。
いつもの間延びした口調ではなく、ネイティヴスピーカーも集中しなければ聞き取れない速さで専門用語を連発している。
聞き耳を立てていた仁王、丸井、切原は顔を見合わせてしまった。さっぱり解らない事が、当たり前ではあるのだが。
電話相手が次々に代わっている事に、仁王は気付く。挨拶と名前を聞き取るだけでも、大した耳だ。

「英語ペラペラッスよ…あの女…。」

「ノーベル物理学賞受賞資格だっけ?英語話せなきゃ話になんねぇな。あーゆーのを天才って言うのか?ちょっと嫌だけど。」

「待ちんしゃい。…信濃、物理だけじゃなか。化学の話しとるぜよ。」

聞き慣れた元素記号が幾つか羅列されれば、中学生でもジャンルは解る。ただし内容は、全くと言っていい程解らない。
理系なら何でもやる無節操と、氷帝からは言われる。たまに笑い声が聞こえ、言語が変わっても解らない事に変わりは無いのだ。

「…あいつマジメに何者ッスか?」

「参謀が論文を読みたがる訳じゃ。タダのマネージャーじゃなさそうナリ。」

ある意味、真理だが更なる奥は非常識の塊であり、偏った知識の持ち主だ。

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