理系バカと呼ばれ | ナノ
青いチューリップ




作業を終え、早急に練習の準備を始めた香奈。
体に時計でも組み込まれているのか?と思いたくなる無駄の無い動き。練習開始20分前には、全ての準備を終わらせていた。

「グラデーションならば不可能ではないが、全体をマリンブルーに統一しようとした場合」

「へえぇ、物理学者様は結構使えるのね。」

座り込んで、ブツブツと理論を組み立てていく香奈に白嶺はさも優位に立っているが如く、声をかけた。

「バラとは違い、遺伝子操作せずとも色素を有しているからして組み合わせ次第ではあらゆる色彩を表現する可能性」

「話を聞きなさい!」

壁を叩き、香奈の集中力を断った。ゆっくりと白嶺を見上げて、不思議そうに首を傾げる。

「何か?」

「いちいち腹立つわね。ねぇ物理学者様。どうやって跡部君達に取り入ったのかしら?」

白嶺の視力は、だいぶ悪化しているようだ。あれだけ叩かれている香奈が、取り入っているように見えてしまうのだから。
猫なで声に笑みを浮かべているが、効果は無い。

「取り入った?私はただ彼らを研究するだけであってそれ以上はありません。景吾君も知っていると思います。インサイトの解明が、学校での最優先課題ですから。」

何と呼ばれても、香奈は気にしない。学究の徒である事は変わらないのだから。淡々と答える香奈に、白嶺は苛立ちを隠せない。

「氷帝と言えばお金持ちでイケメンがたくさん居るじゃない。物理学者様は頭を使ったのかしら?」

「質問の意図が解りません。」

そして顔の美醜や金持ちの息子など、香奈には何の意味もなさない。顔など手術で幾らでも変わる。香奈は既に億万長者で、研究の為に使う。
世俗的な欲望と無縁、と言えば高尚に聞こえるが単に面倒くさいだけである。

「私はねぇ、知り合ったイケメンはモノにしてきてるのよ。だから、アンタが邪魔なのよ。信濃香奈!ちやほやされるあの場所には私が相応しいの!」

高らかに宣言する白嶺だがやはり、視力に問題があるようだ。
単に荷物が異常に重く、乗り物酔いで顔色が悪すぎて見たくないから、運んだのだ。名前呼びは本当に覚えないからなのだ、と事情を知らないからそう見えるのかも知れない。

「相応しい…定義は何でしょうか。」

「まぁ見ていなさい。楽しみだわ…。天下の物理学者様の、人格を疑われるんだから。」

白嶺は無造作にボトルを手にとって、自ら浴びると耳に痛い悲鳴を上げた。香奈の身長を考慮しない辺り、底の浅さがよく解る。
既に人格には問題がありすぎるのだが。

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