理系バカと呼ばれ | ナノ
いや、ホラーだろコレ




一人目のメイドが、音を上げて辞職願いを跡部の父に出した。
その話を聞いた跡部達は、新しいメイドを連れるついでに何がどう悲惨なのか見物に香奈の自宅を訪れた。見上げて、滝は呻くように呟いた。

「…多分無駄と言う無駄を全部捨ててる。」

景観もそうだが、温かみと言うものが一切無い。植物も無く、一般的とは程遠い香奈の住む家。
何故なら実験に使用するならば、確実性のある屋内栽培で植物は育てる。景観に頓着しない一家なのだ。

「だぁれ〜?」

インターフォンから聞こえる、間延びした緊張感の無い声。しかし、セキュリティは厳重だ。

「跡部だ。香奈、メイド泣き寝入りさせやがったらしいな。」

「なきねいり〜?」

意味が解っていない。
とりあえず、香奈にドアを開けさせて早速日吉と忍足が頭を叩いた。身長差の問題で叩きやすい場所が頭だというそれだけだ。
香奈はパジャマのまま、寝癖が付いた格好で出て来たのである。
休日も着替えろ、と散々言ったのだが。

「まず、香奈の部屋を見せろ。」

目の笑っていないメンバー達。芥川は店番で不在だがその他は潰されたのだ。機嫌が悪くなって当たり前だろう。

「ここ〜。」

あっさり案内されたメンバーは、何も言えなかった。女の子らしさなど論外、倉庫か何かか。と聞きたくなる部屋だった。
床には縦横無尽にコードが張り巡らされ、何に使うのかも彼らには判らない巨大な機械。本棚には論文が詰め込まれていて、パソコンは2台。カーテンは遮光。今は開けられているが、夜はどんな空間になるのか想像に難くない。

「…他人様の家に言うのも何ですが。香奈先輩、アンタ本当にマトモな人間ですか。」

「内臓、血中成分、染色体、さいぼ」

「そういう事じゃありませんから。」

日吉はすかさず頭を叩く。快適に過ごすのではなく、効率良く研究に励む為の部屋なのだ。眠るのも床だから、コードと見紛う髪の毛が動く。
向日と鳳は完全に動けなくなっていた。

「香奈ちゃん…どこで寝とるん?」

「床〜。」

金持ちなんだからベッドぐらい買えよ、と思いたくなるがスペースを有効活用したい香奈には無駄だ。

「香奈、正座しろ。」

何だか怒る事も無駄に思える、香奈の生活。しかしここで諦めれば悪い意味で有名人になるだろう。

「亮君、作業中だ」

「いいから正座しろ!!」

未完成の作業ロボットに視線を向ける度に、香奈は説教が激化している事に気付かず、続きの作業や書きかけの論文を考えていた。
…説教を悉く無駄にしている。

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