理系バカと呼ばれ | ナノ
テストやらせて!




悪意が無いから、と言っても香奈を甘く見てはいけない。氷帝テニス部は、その事実を痛いほど噛み締めていた。

すーはーすーはー

とただひたすらに呼吸を続ける部員達。
その傍らで、香奈は嬉々としてデータをノートに書き殴り、平均値を算出していく。

「だから言っただろうが…香奈の体力テストは花畑が見えるって…。」

一年生の時に、餌食になった宍戸。更にグレードアップしている内容に泣きたくなっていた。それこそ、人類の限界を探し求め追い続ける香奈ならでは、だ。
生半可な研究など、許さないし氷帝テニス部は部員数の多さはピカイチ。
要は、実験体に困らない。

「亮君、酸欠で幻覚見えるの〜?」

言葉の文だ!と叫びたくとも呼吸に忙しい。
榊に至っては高みの見物。香奈がどれだけの知識を有して、駆使するのかを存分に知れるのだ。

「ふむ、信濃!」

「はい、先生。後程コピーをお渡しします。」

「それと、結果をトレーナーに渡し、新たなメニューを作らせろ。では、行ってよし!」

部員には死刑宣告より辛い話だ。
実を言うと、榊と香奈は既に顔見知りだった。一年生にして、タイムマシンの完成理論を打ち立てた最年少ノーベル物理学賞受賞候補者。
香奈は名前も顔も覚えていないが、年齢的に教師だろう、と当たり障りなく。

「崇弘君の体力は〜分かり難いなぁ〜…もっと研究しよ〜。」

コピー能力が目立つ樺地だが、全身の筋力などに香奈は注目している。
無差別に何でも、となれば変わるが肉体には限界がある。個体差があるから、調べがいもあるのだ。傍迷惑極まりない、体力テスト。もう二度とやらない、と部員達は心で誓っていた。
朝から夕方まで、50項目ものテストに付き合わされたのだ。
安請け合いした跡部達メンバーを宍戸は止めた。だが強行されてしまった。

「…川、見えるかも。」

「萩之介君、なんで見えるかもなの〜?」

書き上げたノートをファイルにはさみ、ぐったりとグラウンドに倒れ伏す215名…ではなく、一部は病欠や熱中症でリタイアしている。
それでもある意味壮観だ。日々練習に励むスポーツ少年達を、これほどまでに疲弊させたテスト。

「あ、グラフ化ソフト新しいの使ってみよ〜。」

作るばかりではなく、試供品扱いでかなり色々と貰っていたりする。
先日作成したOSは、ソフトウェア会社が凄まじい金額で買い取っていた。香奈が作った、というネームバリューも少なからずある。
部員を見捨てて部室に向かう香奈を、呼吸に忙しい部員達は見送るしかなかった。

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