理系バカと呼ばれ | ナノ
眼球に興味がある外科医




そして、メイドが卒倒しそうな異空間で香奈は平然と作業を続けている。不気味にしか聞こえない独り言が怖さを増していた。

「香奈様、お食事の用意が整いました。」

香奈の事だけを、と跡部から言われていたメイドだが香奈の部屋は長居したくない。
訓練を積んでいるとは言え無機質すぎる。

「はぁい。」

論文を片手に床から起き上がる香奈は、最早ホラーにしか見えない。4時間ぴったりに睡眠をとり、朝から顔を洗わされ髪を梳かれ、香奈にしてみれば散々だ。1メートルをゆうに超える髪が動くのだから、メイドが居たくないのも当然。
朝食を取り歯を磨かせられて、電車に乗る。跡部と榊によって、香奈専用部室を作る事になったが1日2日の作業ではないので、今はプレハブを使用させられている。

「あの動作は〜集中力を使うからかな〜?脳か視神経か眼球に〜仕組みがありそうな気がするし〜抉らせてくれ」

「だから食事中にグロい事言うな!怖いだろマジメに!?」

昼休みに何気なく呟いた香奈に、ホラー嫌いの向日が悲鳴を上げて日吉が香奈の頭を叩いた。何故かタイミングが素晴らしく合う。

「怖い〜?痛いじゃないの〜?日本では通用しない〜外科医免許あるけど〜。使わないし〜。」

「…香奈先輩が、外科医?どこのですか?」

ゆっくり首を傾げて向日を見ていた香奈に、鳳が目を見開いた。
中学生が、医師免許。非常識にも程があるのだが、香奈は自身の事についてならあっさり答えてしまう。

「アメリカ〜。プロフェッサー・スミスがスキップいっぱいさせてくれたんだよ〜。」

出来は良いが、良すぎて嫌になった教授達の思惑が絡んでいた。
幼く、小柄な香奈は判断力も学力も申し分ない、神に愛されたと言われる手腕。過ぎたるは及ばざるが如しと言うが、無理難題も解決した事でマスコミに注目を浴び、退学は論外だからさっさととっとと、受験させたら受かっちゃった。で世の医師を目指す人々に喧嘩を売るような真似をした。

「誰が抉らせるか!違法だろうが明らかに!」

「うん。同意書とか要るのかな〜?」

やってはいけない事、としてある程度法律も頭に叩き込んでいる。協力はともかく検体になるのだから、誰も是とは言わない。

「…その殺人ファイルの1ページに跡部の目が書かれるのか。」

「岳人、そのネーミング何やねん。」

「樺地辺り使えば殴り殺せそうな厚さじゃん。」

通称、殺人ファイル。内容もさることながら、鈍器にもなる。
香奈はまた、延々と説教されていた。

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