理系バカと呼ばれ | ナノ
やりたくなるんだよ




昼休みの大半を説教に費やされた香奈。
正座を続けていたので、立てなくなっていた。樺地に運ばれ、午後の授業を終えてさっさと帰ろうとしたがそうは問屋がおろさない。樺地に再び抱えられ、あとベッキンガム宮殿へと強制連行されていた。
逃げ出した場合、全員が追い掛ける恐ろしいシステムだ。しかし樺地の筋力は凄まじい。芥川を背負い、片腕で香奈を抱えているからだ。

「景吾君〜。私OSの動作チェックしなきゃいけないんだけど〜?」

「その作業でまた風呂入らない上に、徹夜するだろうが!」

怒りを隠さない跡部。
無精生活の一端を知って許せないのだ。潔癖と言うよりはあまりにも酷すぎて見かねた状態。
他のメンバーもマイペースすぎる香奈に、拳を握っていたりこめかみを震わせていたりしている。
科学至上主義、と言ってもいい理系バカなのだ。

「今日は徹夜しないよ〜?多分。」

「する気満々にしか聞こえねぇ!」

筋を浮かべた宍戸が怒鳴りつけた。車に乗せられ、仕方ないと携帯のメールをチェックする香奈。
車の速さと挟まれた状態から、逃げ出せるとは考えない。

「…フェルマー・ワイルズの最終定理はもう書いたよ〜?」

凄まじく汚い字で、小学生の時書き上げたのだ。ワープロソフトではなく、手書きで。
所詮コピーだが数学者の父に言われ、自力で調べ書いた。最終形態には、まだ遠かった時代。当然答えも渡されず、数学書をひたすら読み漁った。末恐ろしい理系教育である。

「最終定理?香奈ちゃん、なんやそれ。」

「3以上の自然数Nに関して〜XN+YN=ZNに該当する数字が無い定理だよ〜。書いたら腱鞘炎になっちゃった〜。2以下はいっぱ」

顔を上げてあっさり香奈は答える。数学者を志す者ならば、誰もが自力での証明を目指す事で、その道では有名な定理だ。
聞いた自分がバカだった、と忍足は頭を抱えてしまった。滝が口を手で塞いだのである。顔もロクに洗わないが涙を呑んだ。
理系の話は香奈にさせてはいけない、と氷帝メンバーは誓った。長々と講釈を垂れそうだからだ。悪意が無い事と、聞かれたから素直に答えたので非難は出来ないのだ。
タチが非常に悪い。
香奈は再び携帯に目を落として、メールを読み続けている。英語ではなくドイツ語入力が直接出来る改造携帯だ。

「…香奈。何語?」

「ドイツ語〜。日本の携帯電話は〜直接ドイツ語入力出来ないからいじったんだよ〜?」

所謂違法携帯なのだが、いくら没収しようと香奈は幾つでも複製は勿論、グレードアップ出来る。

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