理系バカと呼ばれ | ナノ
正直すぎる。




用意が完璧だと言う事はともかく、目の下の隈は不健康にしか見えない。

「大体香奈先輩は1も2も研究研究と何を研究しているんです?」

「色々〜。」

医学だろうが天文学だろうが、数字が関わる学問は突出した才能。
疑問に正直で頼まれ事も実現可能なら、それこそ寝食を忘れて実行する。それが香奈なのだ。
宍戸は溜め息混じりに日吉へ声をかけた。

「…全知全能じゃない事が救いだな。日吉、朝練行くぞ。」

「そうですね。」

そして部室に入った2人は見事に固まる。元々美しく掃除されていた部室が、居心地の悪さを覚える程美しい。
やるからには徹底的にやりたがる、研究肌の香奈をまだ詳しく知らない。嫌うもの、苦手なものも未だに謎なのだ。ロッカーには手を出されていない事が、救いではある。
自分に言い聞かせながら着替えるが、朝練に参加していない芥川以外の部員は、異常に美しい部室に時間差はあれど固まった。
朝練終了後、着替えている部員がいるにも関わらず、香奈はマイペースにパソコンを起動させ数字とアルファベットを入力する。

「…香奈。何やってんだ?画面黒いぞ。」

「分かり易く言えば〜マックとかウィンドウズの〜基盤になるバイオスの〜基本プログラム〜。処理速度上げるの試しに追加してみよ〜って。以前よりは速くなると思うけど〜容量テラとかいらないでしょ〜?」

専門家としては分かり易く説明しているのだが、ちっとも中学生でなくとも分かり易くない説明である。
マックって何だよファーストフードか?容量テラって何だよ?と疑問符ばかりがメンバーを支配して混乱させる。
悪意が一切無い事が、タチの悪さを増している。

「な、なぁ香奈。ここ掃除したのか?」

「他に〜実現可能な人物がいるの〜?やると言ったんだから〜やるよ〜。」

向日の疑問に答えながら、香奈の手は止まらずキーボードを叩いている。
綺麗過ぎて居心地が悪いと訴えたところで、効率しか考えない香奈には馬の耳に念仏以上の無駄だ。

「香奈、片付けは終わってんのか?」

「うん〜。いつもやってるって聞いた人が〜昨日教えてくれたから〜。」

それでも有り余る時間を、パソコンに向けている。どこまでも理系の香奈は、メンタルケア系では門外漢。そして興味も無い。餅は餅屋とそちらの研究は他に任せて、アルファベットと数字が恋人に近いのだ。
ただし、あまりにも見た目が異様で怖くなる。
無造作に置かれたカバンから標準服を引っ張り出し、着替えようとした香奈を慌てて止める滝と鳳だった。

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