理系バカと呼ばれ | ナノ
日が昇るの早い!




パソコン画面とにらめっこをしていた香奈だが、タイマーの音で我に返った。手製の目覚ましだが、集中力を途切れさせるには充分だった。
一般的に不快な音と言われる、黒板を引っ掻くような音だ。

「もう6時か〜。チェック終わって良かった〜。」

USBメモリを眠りかけていた父に渡し、依頼はひとまず完了した。
既存のOSを上回る機能を持つ、新しいOSを父から頼まれていた。上手く行けば、新世代として世界中に幅を利かせる事も夢ではない。トラブル対策も作っているので、香奈としては完璧を目指した。
何か問題が発生しても、香奈や詳しい者ならすぐに対処できる。

「今日も学校行くの面倒くさいな〜。」

午後は休みだが、朝練はあるのだ。コート整備や部室の掃除と、やる事は既に決めている。
面倒くさいからと体育服を持って行くか否か、一瞬考え効率の問題で持って行く事にした。
朝食と昼食を作り、どう考えても少ない量を機械的に食べる。味付けなど全く気にしていない。
髪の毛も梳かないまま、標準服を着て駅に向かった。顔も洗わなければ、歯も磨かない凄まじい無精だ。…風呂もここ数日入っていない。

「あ、バイオスいじろ〜。時間あるかな〜?」

論文を読みながら、取り留めのないようにしか思えない独り言を言い続ける午前7時の電車。部室に辿り着くと香奈は誰も居ない部室で着替え、掃除を始めた。埃は香奈の天敵である。

「こんなに埃あったら〜ファンが詰まっちゃうよ〜?私のより低スペックなんだから〜。」

基準がかなり間違っているのだが、精密機器であるパソコンに埃や静電気は宜しくない。
手製の愛用パソコンは、そう言った問題を解決した恐ろしい代物だ。キーボードに至るまで徹底的に埃を払い、怖いぐらいに綺麗になった部室。
時間が無い、とコート整備へ向かい、一番乗りの宍戸と日吉が着いた時。あらゆる準備は終了したところだった。
相も変わらず青白い肌の香奈だが、目の下に特殊メイクのような濃い隈が出来ていた。

「おはよ〜亮君?と若君。早いね〜。」

「香奈、なんで俺だけ疑問形なんだ。」

「萩之介君と〜区別しにくいんだよ〜。」

どんな覚え方だ。2人のツッコミが、爽やかな春の朝に唱和した。

「また、香奈先輩徹夜しましたね。」

「OSの最終チェックしてたら〜日が昇っちゃった〜。終わって良かった〜。」

「昇っちゃったで済ませないで下さい!ただでさえ先輩は顔色悪いんですから気を配って下さい!」

栄養は偏っていないのだが絶対量が少ない。徹夜を繰り返した結果、こんなに小柄なのだ。

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