理系バカと呼ばれ | ナノ
※昼休みのランチタイム




化学式や論文について語り続ける香奈だが、依然として樺地に抱えられている。ツッコミを入れずにはいられない。日吉でなくとも思うだろう。

「信濃先輩、その体勢に疑問は無いんですか。」

「科学的見地からは無いよ〜?」

首を傾げる仕草は、可愛らしいのかもしれない。だが無表情、1メートルをゆうに越える髪の毛と青白い肌と細すぎる体では仕草も台無しだ。

「と言うか香奈ちゃん、昼ご飯どないしたん?」

言われるまで気付かなかった、と言わんばかりに手を叩いた香奈。

「論文読みながらだったから〜忘れてた〜。一食抜いたぐらいじゃ〜人間死なないから大丈夫だよ〜。」

「いや大丈夫じゃねぇだろそんな細っこい体で。仕方ねぇから、弁当分けてやるよ。」

「樺地、降ろせ!」

「ウス。」

手招きされるまま、宍戸に近寄る。傍に座って、口を開けた。
自然と固まる一同に非はない。

「…信濃。恥じらいとか知ってるか。」

「ん?人間の手は雑菌だらけだから〜箸とかフォーク使うって聞いたよ〜?」

「そういう問題じゃねぇよ!か、かんせ…」

純情ボーイ宍戸には無理のある、ナチュラルなあーんだ。無自覚に要求している香奈も香奈だが。

「宍戸には無理やな。香奈ちゃん、こっちや。」

小動物さながらに、ちょろちょろと歩く香奈。忍足に卵焼きを与えられて、飲み込むと呟いた。

「1個47キロカロリー前後かな〜?油分が多いね〜。」

「…信濃先輩、そんな事までやれるんですか。」

「うん〜。お母さんがアメリカ行っちゃってから〜栄養学勉強して〜大体は解るよ〜。」

おにぎりを分けようした、鳳の手が止まる。
それは別居と言うのではないか。と思うのも、仕方ない。

「なんで香奈ちゃんのお母さんがアメリカに行くの〜?」

「お母さん物理学やってて〜合同研究に行ったんだよ〜。5年は帰らないって言ってたけど〜進みが遅いし毎日論文出てるから〜もっと長くなるね〜。お父さんは数学だよ〜。」

日進月歩の科学、理系に特化した香奈が日進月歩などと言える筈もなく。
宍戸は依然として、顔が赤い。平然としているのは、芥川と樺地だけだ。
理系なら論文を書く香奈が、母を妨害している事など知る由もない。次から次に依頼や疑問を研究している。
結局、カロリーは言うなと言われてから次々に分け与えられていた。
香奈の胃は、体格以上に小さい。お腹いっぱい食べる暇があるなら、研究に突っ走るのだ。

「信濃、食う量少なすぎじゃねぇ?」

「一食抜いたぐらいじゃ人間死なないから。」

食生活に疑惑が芽生えたレギュラーだった。

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