理系バカと呼ばれ | ナノ
She is science


ただひたすらに引きずり回し。香奈に対するストレスは、テニスで八つ当たりもとい昇華して。
香奈を真人間にする会メンバーは、ようやく卒業式を迎えたのだが。二年生達は心底安堵していた。

「長かった…一年がこんなに長いなんて。香奈に深く関わるとひどい目に遭うんだなぁ。」

乾いた笑いを浮かべながらどこか遠い目をする三年。二年は清々しささえ覚える笑みだ。一年でも、解放されるのだから。

「香奈ちゃん、何読んどんの?」

「無重力及び〜絶対零度下で〜光速に耐える金属の〜化学式だよ〜。」

早くも研究に爆走しようとする香奈だが、約一年かけても変わらない不精癖。体質も改善されず、虎視眈々と部員を狙う香奈を野放しにする会ではない。

「香奈ちゃん高等部進学って聞いたC。違うの?」

「へ?先生にちゃんと〜アメリカ行きますって言ったよ〜?」

眠そうな芥川に目を丸くする香奈。無自覚のうちに、表情はだいぶ豊かになっているのだ。
これは、全国各地のメンバーが果てしなき忍耐を費やした結果。評価されるべきだろう。

「跡部…香奈に言ってなかったのか?」

「言ったら香奈は根こそぎひっくり返しやがるだろ、アーン?」

ごもっともです、と頷く芥川と香奈以外。2人して顔を見合わせる姿は、微笑ましくさえある。そんな香奈を叩き落とす発言。

「香奈、高等部進学に変更されてたぜ?試験受けただろ。」

「全員受けてたよね〜?」

氷帝学園高等部進級試験、要するに学年末テスト。例外なく香奈も受け、極端すぎる結果を残している。外部受験者は更にテストを受けるのだが、香奈は永久就職に近いので無縁だ。

「岳人…香奈ちゃんの理系に関しての研究は国外に出すんは国家的損失やって、跡部の親父さんがあれこれ頑張っとんのやで?」

香奈にも契約と言うものは存在する。現在代理人交渉中のアメリカ、ロシアと言った大国の研究機関が凄まじい争奪戦を繰り広げているのだ。
香奈があまりに幼い事を差し引いても、スケールが巨大である。

「政府がどこまで香奈の研究を評価して、引き止められるかだけどな。とりあえずそれまでは香奈も日本人だ、高等部行ってもおかしくねぇ。」

「…?義務教育じゃないでしょ〜?」

「だけど香奈は一緒に高等部進学って事!クソクソ、スケールデカくても香奈は俺らの仲間なんだからな!?言わせんなよ!」

全く起承転結どころかぶっ飛んだ話なのだが、跡部の親まで引き止めに動き出した現在、香奈は高等部進学を余儀なくされたのであった。
香奈を真人間にするその日まで。

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