理系バカと呼ばれ | ナノ
性格は急に変われない
冬休みとは。学生の特権にして楽しみの一つである。授業から解放され、思う存分羽を伸ばせる期間。
だがその休みは、香奈を真人間にする会メンバーを憂鬱にするものでしか無い。
「香奈、冬休みはどうする?」
「研究〜。」
午前で解放された氷帝メンバー達は、練習に勤しむ二年生以外アトベッキンガムに香奈を連行中だ。滝の問いに、解っていたが即答する香奈へ溜め息が止まらない。
確実に、香奈は家から一歩も出ないまま過ごす可能性が高すぎる。
「…とりあえず風呂に入れて洗え。」
「かしこまりました。」
到着するなり、メイドの手に引かれて風呂に向かう香奈を見送った。連れ回す事は簡単だ。更に香奈の気を引くものがあるなら最高である。
文字通り、生贄扱いだが。
「いっそ三年だけグァム合宿やるか。」
「青学、立海、不動峰、六角、ルドルフ、山吹、比嘉、四天宝寺、大所帯やなぁ…。」
出費もバカにならない上に重要な事を忘れている。海外だから、パスポートを持っている部員限定だ。
更にルドルフはミッション校である。クリスマスに行事があって当然だ。
「おい跡部。他の奴らパスポートあんのか?申請中に冬休み終わるだろ。」
幸村は問題ない。香奈の治療で使用済みだ。流石に香奈や跡部も、そこまでねじ曲げる事は出来ない。宍戸の疑問はごもっともだ。
「青学と立海は去年海外行ったって。丸井と菊丸に聞いたぜ。」
じゃあ他は?となる。幅広い交友関係を築ける向日ならではの情報だが、合わない人は本気で合わない。
沖縄に向かった際、パスポートが要ると盛大な勘違いをしていたのだ。
「監視出来て、変な研究させないだけなのに。回線開く?」
「だな。香奈の風呂は二時間軽くかかる。」
眠りの国へ旅立った芥川以外、沈鬱な面持ちで回線による緊急会議となった。
「パスポートか…確かにそれは問題だ。」
「北海道は?前回沖縄だったし。俺ら六角パスポート無いよ。」
「悪いんだけど、ルドルフはクリスマスイベントあっから無理。イルミネーションとか準備あっから。」
案の定、六角と比嘉はパスポートを持っていない。甲斐は持っているが、向日と逆である。
橘は後輩指導優先、年末年始にイベントのある学校。あくまで香奈を真人間にする会は、非公式かつ私的なものだ。
「…どないすんねん。なんで年末年始学校イベントあんねん。」
基準は自分達の学校、何もないの?と驚く者やそんなものがあるのか?と異文化交流に近い。
香奈の冬休み引きこもり阻止から、話がそれていく中学生達であった。
- 95 -
[*前] | [次#]
ページ:
メイン
トップへ