理系バカと呼ばれ | ナノ
おしどり夫婦はまず無理


透き通るような、と言う美しい表現を超えた青ざめた肌。変動を繰り返す体重により、頬も痩せこけている事もある。更に加えて、目の下に刻まれた隈と長すぎる髪のホラーコンボに氷帝は慣れた。
悲しい事だが、事実だ。

「…ん〜。」

香奈専用部室にて、徹夜明けのペナルティとして簀巻きにされた香奈は芥川と眠りを貪る。昼休みだが、起きる気配は無い。

「…すげぇ香奈の飯。」

「スゴいで済むんか?食えんのか岳人。」

とりあえず栄養摂取していればいい、というポリシーの下。生のほうれん草だの独特の芳香を放つ生のレバーだのを一緒くたにした、世にも恐ろしい香奈特製サンドイッチ。
芥川以外のメンバーは、味の想像も出来ないでいる。当たり前ではある。
発想そのものが香奈は新鮮すぎるのだ。

「香奈らしいっちゃらしいよね。合理化重視で無駄を省く。要は、サンドイッチ伯の逸話みたいなのに栄養価を異常に高めて食事を楽しもうとしない訳だ。」

滝も流石に首を竦める。科学の徒、香奈は理解を示さないから困るのだ。
本気でバゲットに挟んだだけのサンドイッチが、雄弁に物語っている。

「香奈先輩の旦那さんになる人、大変でしょうね。奥さんが有名人ですし。」

「おい長太郎、それを何とか人並みにするのが俺らの目標だろ。」

だが、青白い肌の香奈を思わず見てしまう。果たして香奈にマトモな恋愛感情があるのか?という根本的な事だ。
更にこんな香奈を好きだと言える普通の中学生は、まず居ない。

「香奈が一番懐いてんのは日吉か忍足だな。」

「跡部さん、それは違います。単に家に向かわされる回数が多いんです。」

「やな。香奈ちゃんから科学以外で好き、って聞いた事もあらへん。」

可愛い、綺麗、気持ち悪いなどの外観に全く興味が無い香奈は、人嫌いではないが嫌われる事が多い。一芸に秀ですぎた結果だ。

「でも香奈引きずってマトモな生活させられんのはひよっこだろ。」

「香奈ちゃんの胸はやわこく」

「忍足さん、食事中に叩かせるような言動は慎んで下さい。」

香奈のみならず、他校の先輩だろうと唸る日吉必携。ツッコミマスターが最有力候補、と誰もが嫌がるであろう香奈の彼氏。当然だが日吉も拒否する。
見た目が変わっても香奈は一生、科学と添い遂げかねない。

「香奈ちゃーん、ご飯食べよう〜?」

「ん〜?おはようジローく〜ん。」

ぎゃあぎゃあと騒がしいメンバーに、芥川が香奈を起こして終息させた。
意図的ではないが、香奈はすぐ起きるのだ。動けないから寝ているだけで。

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