螢惑は芥子に眠る | ナノ
お出迎えは


比嘉の面々を放置し、立海三年生達の待つ場所へ辿り着いたバカップル。
当然ながら、真田が仁王立ちで顔をしかめていた。他のメンバーは、思い思いに軽く打ち合いを楽しんでいる。

「…赤也、赤城。手塚の試合はとうに終わった筈だが何故遅れた。」

「あ、はは…いや、満とドリンク何にするかちょっと遅くなって…すんません。嘘です。」

赤也が言い繕うものの、言い訳のバリエーションが貧困と見抜かれていては真田の眼光も鋭くなる。満、下手でごめんと内心平謝りしている。

「すみません真田先輩、比嘉中の方々と少しお話をしていました。」

「…話だけ、か?」

「ちょっとだけ、走りました。ちょっとです。」

緊張の走った真田。満の話し合いは、正直信用ならない。
騒ぎになれば気付くが、この暑い中ジャージを着込んだ女の子に何かをされたなど、誰が言えるだろう。
男のプライドに関わる。

「何故、ちょっとを強調する?」

「ほ、ほら!真田副部長、満が全速力でここまで突っ走ったら目立つじゃないすか!それにゴタゴタは無いっすから!」

つまりトラブルになりかけたのを、全速力で走って撒いたか脅した。と分かり易すぎる。満が思わず赤也を呆れた表情で見てしまうほどだ。
とりあえず満達が自力でトラブルを回避した事を喜ぶべきかと、真田は溜め息を吐いた。

「…揉め事は無いな?」

「…おそらくは。」

単に満が異常な速さで走って、びっくりしていた比嘉を見捨てて戻った以上、絶対とは言えない。
比嘉の縮地法は自慢であり誇りでもある。満の移動速度に目がついて行かなかった事も、沽券に関わるだろう。
返事が頼りなくなるのは避けがたい。

「解った。赤城、出来るだけ慎んでくれ。赤也も軽々しく赤城に頼るな。」

「はい。」

「ッス。」

真田から解放され、肩の力を抜いた赤也。ありのままを言って、延々と説教される事を満が回避した。

「真田ー、柳生と交代。」

「うむ、今行く。」

完全に安全とは言えないものの、比嘉は負けた学校なので会う確率は低い。真田はラケットを取り、開放されたコートへ向かった。
何の気なしに、バカップルが見送る。

「赤城さん、私と軽く試合形式でしてみませんか?ラケットはお持ちでしたよね?」

「あ、はい。ラケットはありますが…赤也ではなく、私ですか?」

「俺審判やるッス。柳生先輩、満の本気見たいンスよね?」

「はい。是非とも本気でお願いします。」

立海占有ではないし、人目もあるのだが。満は断れずに頷いた。

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