螢惑は芥子に眠る | ナノ
身も蓋も御座いません
全国大会、立海は再挑戦として背水の陣で頂点に挑みかかる。三連覇の野望目掛けて。
「赤也こっちこっち!見れなくなっちゃう!」
「わわ、解ったって!何で青学の試合?」
笑顔を浮かべ、珍しく赤也を引っ張り回す満。さしもの赤也も、不思議に思ってしまう満の浮かれぶり。
「沖縄の比嘉?って学校、第一試合でどこかの顧問を病院送りにしたって!楽しそうじゃない!」
「…あー、一瞬で解ったからちょっと落ち着け。」
「無理よ、見えたわ!」
赤也の息を切らせる速さで走り抜け、満は食い入るようにコートを見た。菊丸が2人いる。
「満、アレ出来る?」
「うん。かなり体力使うからしんどいけど。お母さんが得意だよ?ああいうハッタリは好きだし。」
世界七不思議、と言っていいのではないかと赤也が考える満の母方の物騒すぎる教育課程。大概の真似ならやってのけてしまう。
菊丸の分身を、ハッタリ呼ばわりしてしまう異常。
「満、つまんねーの?」
先程までの、嬉々として急がせた雰囲気は無い。冷ややかに、ゲームを見ているだけだ。
満が求めていたのは荒ぶる赤。噂に聞いてもその通りとは限らない。
「期待外れ、かなぁ。手塚さんの試合は絶対柳先輩がチェック入れるだろうし、注目度高いから。」
「そりゃな。」
「体力の無駄遣い、って感じだし。」
「…そりゃあんまりじゃね?満はつえーし、テニスもガンガン上達してるみてぇだけど。」
立海の芥子色ジャージ2人のバカップルが、いちゃつきながら見ている。それがどれだけ目立つか、本人達はあまり気にしていないようだ。
「あ、不二。アレ、赤城さんと切原じゃ…。」
「タカさん、僕らは何も見なかった。何も聞かなかったから、赤城さんが観戦した事は知らない。」
「…だな。」
今、史上最悪の中学校二年生女子の満がいる。と知ったら嫌でもプレッシャーがかかる。
手塚、海堂、乾は準備運動に向かっていて心底良かった、と思わずには居られないのだ。普通に怖いから。
「多分全員、何かかじってるね。武術だと思う。」
「へー、知ってる?」
「知らない動き。でも足運びが全員似てるの。何て言うか、そう、モデルさんの歩き方が似てるのと同じみたいな?」
「満とおばさんみたくいきなり足音消したりどすどす歩かないって?」
「…何か引っ掛かるけど、そんな感じ。」
試合見ろよ、と言いたくなる者もいるだろうが。相手は満と赤也のバカップル。刺激すれば、火傷で済めばいい被害。笑顔に隠れた猛毒の牙を進んで受ける者は居ない。
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