螢惑は芥子に眠る | ナノ
八つ当たりに注意
河村、海堂、桃城。満は言い忘れていたが、越前と菊丸もその業を見た。不二と乾は、息もままならない満の敵意に晒された。
「赤城、不動峰やっちゃうのかな…。」
「英二先輩、あいつらが赤城に勝てると思います?俺は無理ッスよ。」
追い込まれて初めて理解する、猛毒を含んだ牙。それでも満は見逃してくれた、と実感する。
常識では考えられない異常な速さで、何事も無かったかのように満と赤也はいちゃつき出すからだ。
「おーい!桃ー!神尾が呼んでるぞー!休憩中に終わらせろよ!」
「うえ゙っ!?」
噂をすれば何とやら。助けを求めて手塚を見れば、頷かれた。
桃城を助ける者は居ないようだ。誰しも命は惜しいのである。
大石も頑張れ、と言わんばかりに肩を叩いた。
「…行ってらっしゃい、桃先輩。」
「コワい意味に聞こえるから止めろ越前!」
先程まで、満VS不動峰の異種格闘技戦について好き勝手言っていた。疚しくなるなとは、言えない。
そもそも満関連以外で、神尾が青学に来る理由は思い当たらないのだ。
「んだよ、神尾。」
「赤城の詳しい話、聞かせてくれ。」
外れて欲しかった嫌な予感は、大当たり。満の薄ら寒い笑みが、桃城の脳裏を過ぎった。だが、見た事は言っていい。
説明に自信の無い桃城は、満の業を見た海堂を勧めたい。
「赤城の詳しい話って…腕上げただけで俺のTシャツ横に切ったり、お前に怪我させたのしか見てねぇ。見た事は言っていいルールあっけど、正直見えねぇんだよ。」
「ならマムシがビビったのは何でだよ!?」
「アイツはその…手を見たらしいから。」
「は?手?」
そう言いたくなるのは物凄く解る、と桃城は頷く。そして乾を手招きした。堂々と立ち聞きしていたのだから、覚悟はあるだろうと。乾も、小さく嘆息して神尾に近寄った。
「赤城満、立海二年。切原と交際中で、異名は穏やかな死神、変態保健委員。万年筆で有名だ。だが、敵意を向けられたら身動きどころか息も難しい。」
「敵意?」
「いつもは出さない主義のようだ。表情があれば逃げられる。真顔になれば、切られる確率86%。」
思わず、神尾は満に切られた右頬を押さえる。そして真顔の恐ろしさを思い出した。
かまいたち、と言われたが違うのか?と自問自答を繰り返す。
「見えねぇけど、タネも仕掛けもあるってな。赤城は放っておいてくれれば何もしねぇ。」
「正確には、放っておいて欲しいそうだ。リストバンドは、鉛板入りのパワーリスト。」
「…どうしたらいい。明日立海に行く。橘さんと杏ちゃんが危ない…。」
そこまでは面倒を見切れない、と言ったが満は選手生命など容易く奪う。庇う事を、二人は勧めた。
神奈川を中心に、揺れ動く関東。全国に広まらない保障は、誰にも出来ない。
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