螢惑は芥子に眠る | ナノ
幽王に近しくも異なり


青学メンバーと、立海三年は流血カップルに知られないよう、細心の注意を払って連絡していた。

「…で、赤城さんは青学を許すなんて言った記憶は無いんだって。どうする手塚?」

「許してくれとは言っていない。謝罪しただけ、と言うわけか。」

明らかに他人事の幸村と、嫌な汗が吹き出る手塚。電話越しでも、手塚の動揺はよく解る。同じ目に遭ったからだ。
妙な噂はあるが極めて優秀な後輩のまま、卒業出来ていたら。自衛の為にだけ輝く凶刃を知らずに生活出来たなら。
そう思わずにはいられなかった。

「だろうな。赤城さんは普通にしてればいい後輩だけど、手塚達は俺達のフォロー虚しく真っ向から対立したんだし。」

「それは弁解しない。が、不動峰の件は忠告しに行ったぞ。」

幸村はその優しげな顔を曇らせ、溜め息を吐いた。満のやった事だと、信じなかったのはどこのどちら様でした?と言いたい。
それだけ満の日頃の行いと見た目が見事に、隠れ蓑となっている現実だ。

「信じないな、不動峰は。実際見てもよく解らない事を赤城さんはするし。それに不動峰から話があるってこの前連絡が…手塚、大丈夫?」

「な、何とかな。…死にたいのかあいつらは。」

盛大に何かが落下する音がして、懸念した幸村だがそれよりも優先すべきは不動峰の命運だ。杏も標的と見なされたかもしれない。

「言っちゃ何だけど、赤城さんは自殺志願者を手伝うような人じゃない。そもそも殺人だ。」

選手生命なら断ち切るだろうが、人生を終わらせるような真似を今したら間違い無く容疑者だ。そんな危ない橋を満は渡らない。

「赤城は何もしなければ、何もして来ない、だったか。」

「柳が聞いた話ではね。赤城さんは有言実行、だけど策士だから言わないけどやる場合がある。」

「俺達に何が出来る。事態は悪化の一途だ。」

「他校とのトラブルの元凶が何言ってるの?役に立たないマネージャーもどき連れてきたのは誰?」

それを言われると、非常に苦しい青学。要するに出来ないじゃなく何か手を打てと要求されている。拒否権など存在しない。

「…全国大会までに何とか終わらせる努力はする。これしか言えない。」

「だろうな、こっちも万年筆以上のモノが使われないよう気を使わなきゃいけない。」

念入りに手入れをしておくと宣言した満。何を使われるか、恐ろしくて仕方がない。
警告を満が放った以上、あらゆるケースを想定すべきだ。
因みに、柳生と海堂は顔面蒼白。大石とジャッカルは胃痛に苛まれていたのだった。

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