螢惑は芥子に眠る | ナノ
蘇る恨みの数々
バカップル丸出しでいちゃついている2人だが、青学は倒れても何ら不思議ではない程に顔色が悪い。
針でゴキブリを仕留める上に、パワーリストを着けたまま目にも留まらぬ早業を繰り出せるのだ。怖がらない方が不思議である。
「幸村先輩、固まっていらっしゃるのですが如何しましょうか?」
「そうだな、話が進まないし赤城さんは気にしていないみたいだからね。でも青学目立つからほっとくわけにもいかないな。」
「幸村部長、俺らも充分目立ってるッス。」
一見無害なバカップルが一様に幸村を見る。満は丸腰だが、怖いものは怖い。
下手をすればパワーリストの板すら武器になるのではないか?と考えたくもなるだろう。そこは真田を肇とするメンバーが考慮し、鋭利な部分を削っているからならない。
「それよりさ、青学の奴らを現実に戻そうぜ?」
「はいはーい。俺は真田のビンタ推奨じゃ。」
「…意識ぶっ飛ぶ奴がいるんじゃね?」
ジャッカルの提案に、仁王はまだ恨みつらみがあると言わんばかりの発言。気持ちは解らなくもないが、と丸井が真田を見上げた。
「下手にやると口の中を切ってしまう。却下だ。」
「そうですね、流石に口の中を赤城さんに手当てさせるのは切原君が嫌がるでしょう。」
「当たり前ッスよ!」
「そもそも消毒液がイソジンですから、私が何かする事にはならないと思いますよ?」
じゃあどうしよう?と全員が青学メンバーを見やる。季節柄、水を掛けてもすぐに乾くが立海はこれから全員で会場の下見に行く予定がある。
元々短時間で終わらせるつもりだった。
「安全かつ騒ぎにならないように、か。」
「困ったな。わざわざ謝りに来て固まるなんて。」
「文句言っても聞いてないだろうな。ジャッカル胃薬飲んでたってのに。」
「柳生もハゲるとこじゃったなぁ。」
なんか腹立ってきた。と言わんばかりだが、まだ固まっている。
「お話しただけで具体的に危害を加えてはいないのですがね。」
「ちゃんと冗談だって言ってんのにな。あ、でもパワーリストは本当か。」
「…教授。赤城は、パワーリストを着けたままどこまで動けるんだ?」
「質問は具体的にしろ、貞治。朝練、本練習で赤城はランニングをレギュラーと同じ速さで走り、短距離なら誰よりも速い。赤也のナックルサーブを返す女子だ。」
「柳先輩、それは一般的に凄い事なのですか?」
「…そう言えば赤城は立海の試合しか観ていないな。赤也は全国区の選手にナックルサーブで勝てる。」
満の基準は、立海。ジャッカルの守備範囲の広さは当たり前、と満本人の資質もあるがとんでもない事をやっているのだ。
「王者ですから当たり前では?」
気の抜けた発言に、青学メンバーが漸く、忘我から立ち直った。
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