螢惑は芥子に眠る | ナノ
半年以上一緒だし


氷帝の繋ぎもあり、立海と青学は連絡を取れるようにした。が、不動峰から立海へ話があるとの連絡がやって来て、三年生はまた悩んでいた。心痛の絶えない学校である。

「…もう笑うしかない、何だか笑えてきた。」

「どの面下げていらっしゃるのでしょうね、念入りに手入れしておきます。」

神尾に関しては、もう満は許さない。赤也も満を止めはしない。
人間、結局自分が可愛いのだ。幸村も肩を震わせて、丸井と仁王は涙を流して笑っている。

「赤城、青学は?」

「許すなんて言った記憶はありませんが?不動峰を庇うようなら、腕の一本は覚悟して頂きたいです。」

満は本気だ。柳生は指先から体温が失せるような感覚に陥った。

「赤城、すまないが手足と命は見逃してくれ。全国で借りを返すのが俺達の目的だ。テニスが出来る状態なら構わない。」

「ん、柳先輩の言う通り。変な勝ち方したくねぇし、満のせいにされんのイヤだ。」

なまじ優秀であるが故に、忘れようにも忘れられない不動峰の存在。
柳のデータにより、杏が部長の妹だと知ったが満は血で敵を認識しない。そんな事を言ったらキリが無い家系だ。
ただし、杏は違う。赤也を嫌っていて、更に神尾に傷を付けた満へ憎悪を向け始めていた。
メールで、はっきりと言われたのだ。満を許さない、友人ではないと。
友情は儚い。命もまた、満にとって同じだ。

「解りました。…懲りていて下されば何もしません。こちらからは行かないと思います。心配なら赤也が家に来たらいいしね。」

有言実行を旨とする満は今まで、言った事を撤回して行動していない。欺いて罠に落とす事はしたが、言っていないのだ。

「その必要は無い。赤城が好んで騒ぎを起こした事など無いだろう。」

「そうじゃ、いっつも赤城は外に居ったのに中に引きずり込まれとる。不動峰も終わったのう。バカすぎぜよ。」

「氷帝は中立を保ちたい様子だとか。出来る限り意志は尊重すべきでしょう。彼らは今回無関係です。」

話の内容はかなり殺伐としているが、昼休み。バカップルは手を繋いでリラックスした状態だ。それに満が立海レギュラーを怖がらせても意味がない。

「そうだね、跡部には面倒な事させたし。柳生は優しいよ。」

「赤也、私が何を言ってもちょっとだけ、黙っていてね。不動峰主将橘の妹、彼女は私を敵視するとの事です。ストテニに誘って頂いた方。」

「…不動峰、正気か?万年筆見て言えるとかスゴすぎだろぃ。」

最早、何が起きても怖くなどない。恐怖のメーターを振り切った立海は、世にも恐ろしい会話を平然と行っていた。

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