螢惑は芥子に眠る | ナノ
白黒付けずに朱にする


暇を見つけ、青学メンバーは不動峰へと赴いた。桃城も多少なりは関与した今回の揉め事、負い目を感じるのは人として当然なのだろう。

「いきなりごめん、レギュラーのみんなと話がしたいんだ。」

「赤城の事についてだ。」

真剣かつ逼迫した面持ちの青学メンバー。凄まじい緊張感を漂わせて、何事かと不動峰の部員が思うのも不思議ではない。
不二も笑顔ではなく、海堂は青ざめている。

「?はぁ…。橘さーん!青学の連中が全員呼んでまーす!」

「青学?こんな時期に?」

首を傾げるメンバーだが、全国大会前だ。満の魔手から逃がす為、心置きなく集中出来るように出来る事はしておきたい。
森の声に、メンバーが集まりだした。神尾の頬は、完治に近い。
満が手加減したからだ。

「よ、神尾。怪我治ってよかったな?」

「ん?あぁ。…なんかあったのか?」

「大アリ。海堂先輩がわざわざ注意したのに赤城に関わったんでしょ?」

全ての糸が行き着く先、誰もが恐れる女子。赤城満。その名を出され、知らない者はきょとんとした。

「内村、赤城って誰?」

「いや知らねえよ。…あ。伊武が言ってた。アブねー立海の女子って。」

櫻井と内村が顔を見合わせて、満の伝聞だけを話し始めたが橘が諫めた。

「神尾に怪我をさせた、と聞いたが。」

「桃から聞いたけど、化け物って言って切原バカにしたらしいね。…マジで死ぬよ?」

「は?」

ムードメーカーである菊丸が、真顔で忠告した。満の恐ろしさは、体験しなければ解らないが解らないままで良い種類。鳩が豆鉄砲を食らったような、と言う表現がよく似合う不動峰の面々。
知らなくても、満による生命の危機にある事は伝えるべきだ、とメンバーは判断したのだ。

「俺達も先日、赤城の怒りに触れた。その時の事を話そう。」

「嘘偽りなしだ。本当にあったから、笑わないで最後まで聞いて欲しい。」

乾がノートを開き、大石が真剣に見つめる。先日の件は、自分達に非があったと解るから恥を忍んで体験談を語るのだ。

「…って、事だったんだ。赤城さんは確かにとんでもない人だけど、ちゃんと話せばいい人だよ。謝った方がいい。」

絵に描いたような優等生、それが満の評価だ。どれだけ畏怖の対象にされようが驕りなど無い。
桃城のTシャツを切り、更に不二と乾を動けない程の恐怖に落とした事。それもまた事実。そして満に話が通じない訳ではないのだ。

「ちょっと小説の読み過ぎじゃないか?」

「橘、与太話をする位なら練習している。赤城は危険だ。奴の底は見えない上に計り知れない。深入りするな。もう、忠告はしない。帰るぞ。」

言いたい放題言うだけ言って帰った。と一部の不動峰選手が思うのは仕方ない。知られそうなのだから。

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