螢惑は芥子に眠る | ナノ
関係者各位に告ぐ


氷帝に、立海と青学から連絡が向かった。
全国出場という事ですっかりお祭り気分だった、氷帝を叩き落とすには充分な要素。なまじ合宿で関わったから、無碍にも出来ない。

「不動峰…もういっそ滅べ赤城に喧嘩売りやがって。青学の二の舞になりたいんだろ。」

満の異能、それらを受け入れた赤也を否定とは万年筆が光るのも無理はない。私怨もちょっとだけ入った宍戸を咎めるには、満が怖すぎた。

「種も仕掛けも御座いません、やなくてあるって言うとるし…。」

王者立海が、プライドも投げ捨てる程の熱弁を振るう満の業。見てはいないが、そんな下らない嘘を吐いてもメリットは無い。信憑性が異常に高いのだ。
青学がその牙を向けられても尚無事だったのは、満が家系的には穏健派だったから。争いを好まない典型的な日本人なのだ、本来は。

「立海はメアド交換してるけど青学どうすんだ?不動峰なんてどーでもいいだろ?」

寧ろこの際消えれば?と言わんばかりの言い種だが、満と不動峰のトラブルまで面倒を見てやる義理はどこにもない。止めなかったから、と満に狙われる事は絶対に無いのだから。
逆はありそうな話である。

「何より、赤城はそんなスパスパ切る趣味は無いって言ってましたからね。」

「だな。連絡だけしてほっとくか。」

敗者切り捨て主義氷帝。明らかに負けが見えているよく知らない赤の他人を満から助けるなど、そんな危険な橋は渡りたくない。満の刃が襲いかからないと断言出来るのは、無関係の人間限定なのだ。
赤也すら危機に瀕した前科がある。

「それにしても赤城さん、トラブル多いですね。俺達のせいもちょっとありますけど。」

「幸村が言うには立海じゃ大人しいんだと。ま、あんな特技持ってりゃ当たり前だがな。」

どこに何を持っているか、いつどこを狙われるか。まったくもって予想しづらい満。穏やかに過ごさせればいいものを、何の因果か満の癇に障る事が次から次にやって来る。

「桃城も大概アホやな。赤城さんほっときゃ切原ん彼女で済むやろ。」

「つーか不動峰がバカ。誰だか知らねえけど赤城にテニスやらせたんだろ?」

鉛板を入れても早業を繰り出すとは知らなくとも、逸話は少なからず聞いた。
更に合宿での、桃城が殴りかかった時に満が万年筆を取り出していた事。宍戸と忍足は目撃しているのだ。見えなかった速さ、と認識している。

「本気でやったら立海最速だったな。」

「スタミナ不足は聞いたが鍛えたのか…?」

だとしたら、基礎から数値が異常。知らないけれども怖くなるのが、満なのである。出来るだけ関わりたくない氷帝は、早急に手を打たなければならない。

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