螢惑は芥子に眠る | ナノ
知らぬが幸せ


仁王が言ったとおり、顔面蒼白の青学メンバーがやって来た。特に桃城と不二は今にも倒れそうなのではないか?とこちらが心配になるぐらいだ。

「久し振り。日本一敵に回しちゃいけない後輩を殴ろうとした命知らず。」

「…幸村先輩。笑顔で私を犯罪者扱いしないで頂けますか?」

何かあってからでは遅い、と満達はバカップル丸出しで手を繋いでいる。立海は見慣れたものだ。

「でも赤城、桃城のTシャツ切ってただろ。ジャッカルが必死で押さえたから血の雨降らなかったし。」

「そんな事もありましたねぇ。その節ではご迷惑おかけしました。」

そんな事で終わらせないでくれ。と言いたいのは山々だが相手は満。
パワーリストを着けても早業を繰り出せるのだ。

「…赤城。マネージャーと桃城、乾の件はすまなかった。」

「すまなかった。で済まない問題だと言ったらどうしますか?」

手塚が頭を下げたのだが、一瞬にして空気が凍り付いた。

「満!そーゆー冗談にならない冗談は言うなよ!」

「俺らは多少慣れてっから解るけどな。」

溜め息混じりにジャッカルが哀愁を漂わせながら呟くと、空気が和らいだ。

「言ってみたくてつい。そもそも武器持ってないんだから出来ないわよ。」

イチャイチャしながら笑いあうバカップルに、青学は深々と息をついた。
だが、まだ問題はある。

「…武器?」

「あ、大石は知らんのか。赤城はのぅ、文房具でお手軽殺傷事件起こそうと思えば出来るんじゃ。」

「仁王君、お手軽殺傷事件って料理番組ではないのですから。」

「ゴキブリを針1本で仕留める赤城じゃから。」

「あっさり真似されたら私泣きますよ?急所と動きを予測しなければいけないのですから。」

「赤城さん、普通に出来ないから安心して。」

完全に固まってしまった青学をよそに、和気藹々とゴキブリ撃退法を話している立海。

「赤城、常々思っていたのだが板を増やせば動きが鈍るのか?」

「少なくとも3日は動きが悪くなります。真田先輩と同じ重さですからね。」

「…そのリストバンド、板入れてんの…?」

「そう言えば教えてなかったっけ。」

恐々と満のパワーリストを指さす菊丸に、赤也が思い出したように言う。
あるのが当たり前、と慣れていたのだ。桃城に殴りかかられた日も、当然身に着けていた。

「取った後が怖いので外させないで下さいね。」

「慣らさなければ目測を誤りそうになりますからね。…ごつくなっちゃいましたし。」

当たり前だが、風呂では外している。その時に、多少苦労しているのだ。
青学メンバーは、また固まっている。

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