螢惑は芥子に眠る | ナノ
真紅の宝珠


杏との出会いにより、なし崩しにテニス道具一式を購入せざるを得なくなった。無論、プレイもしなければならない。
その事を柳に相談したのだが、柳は頭を抱えたくなった。

「…赤城。あの事は教えていないな?」

「すいません、どの事か解りません。」

満にせよ、母にせよ秘密が多すぎる上に危険。知るべきではない秘密ばかりだ。文字通り闇へ葬られる。

「…それもそうだな。短距離走で、俺達よりも速く走れる事とパワーリストの重さ、それから赤也のナックルサーブを打ち返す事、ジャッカルよりも守備範囲が広い事、だな。」

「教えていません。ですが不動峰の二年生と伺いましたし、赤也と橘さんの試合を観戦されていたそうですから…神奈川の学校に通う事と名前と学年は教えましたし神尾君、伊武君にちょっと見せてしまいましたので…赤也と付き合っている事と万年筆の話まで至る可能性は高いかと。」

青学、氷帝が最も恐れる女子。満は隠し事がとても上手い。ただし隠す気が無ければ無防備なのだ。
文房具が光らなかっただけでは、安心出来ないだけの身体能力を持っている。不幸中の幸い、満は多用したくない能力は滅多に出さない。

「ニュースにまでなった事を自分ではない、としらを切るには難しいな。」

海堂が不動峰の2人に忠告をした、それが満の特異性を際立たせる。
かつて満と赤也の逆鱗に触れ、青学は選手生命はおろかプライドも危ぶまれたのだ。見た事は言ってもいいと満はよく言う。
実物を見ても信じられないからだ。

「青学には皆さんであれこれと私の話をしてましたからね。海堂君が何を彼らに言ったか。」

「考えるだに恐ろしいな。赤城は両利きだと言ったが本来はどちらだ?」

「主に使うのは右です。」

幼い頃から両利きに、と訓練されたので満は覚えていないのだ。
柳も考えたところで話にならない、と話題を変えた。赤をこよなく愛する、血塗られた家系図の末裔。
足にもパワーアンクルをと一瞬考えたが…女子生徒にそれは目立つ。パワーリストは、赤也とお揃いとバカップル丸出しで言い逃れが出来るのだ。

「カウンターパンチャーに見えるが…そうだな。オールラウンダー向けで軽いラケットとシューズを勧めるぞ。」

「いきなり本格的なものを使えますか?」

柳は薄く笑い、不思議そうにする満を見た。
磨かなくとも既に輝きを放つ満の能力、平部員達が自信を失いそうになる素質。比較対象が立海レギュラーだから、満は変なのだ。

「赤也の癖がついたラケットでナックルサーブを打ち返す赤城とは思えない言葉だな。」

「ラケットも癖が付くのですね。解りました。」

赤を基調に、満はテニス道具一式を揃えた。

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