螢惑は芥子に眠る | ナノ
恥いる姿も愛し
幸村発案による、公開処刑ならぬ実験。服が破れるのは経済的によろしくない、との事で。
上半裸のレギュラー達に満の手から繰り出される、消しゴムだの色鉛筆だのシャーペンの芯だのの嵐が見舞われた。
「はい柳生先輩終了しましたので手当に入ります。…あの。柳生先輩?シャツに血が付きますよ。」
恐怖と羞恥で赤いんだか青いんだか、顔色がよく判らない柳生。恥ずかしがられると満とて思春期の女子中学生、つられるのは仕方がない。
「柳生先輩っ!早く手当てしてもらって下さいよーっ!」
恥ずかしがる満は自分だけ見たい、と言う赤也の見事な独占欲が炸裂。確かに満は違法だが母の助手をしていて、平然と処置をするが見慣れている筈も無い。
水泳の授業程度なのだ。
「は、はい…あの。赤城さん。あんまりまじまじと見ないで下さい。」
「み、見れませんっ!傷だけ診ますから!」
初々しいにも程がある。赤也と一緒にバカップルを毎日やっていても、流石に異性の半裸をジロジロ見るなど不可能だ。
柳は極めて冷静、真田は必死に堪え、仁王は茶化した為真田と柳生から説教。
赤也すらマトモに見れない程、珍しい態度だった。
「こ、こんなに恥ずかしい治療生まれて初めて。」
穴があったら入りたい。と言わんばかりの満は耳まで真っ赤になっていた。
顔を覆っていても、幸村にはやっぱり女の子だな。としか思えない豹変ぶりだ。処刑中、満は恐ろしい程集中力を高め敵意こそ無かったが怖いの一言で言い切れないものがあったのだ。
「照れた満久しぶりに見たなー。やっぱ可愛い。」
「恥ずかしいんだから可愛いなんて言わないで!」
真っ赤な顔に、座り込んでいた為完全に見上げる最愛の彼女。惚気の一つも言いたくなるのだろう。
テニスに於いて、怪我をするのは基本的に露出部分。赤也のナックルサーブで打撲、と言うのもあるが。そう滅多にある訳では無い。
「あーもう。顔洗ってきますっ!」
脱兎の如く駆け出し、文字通り消えたような俊足の満だが。居たたまれないのは三年レギュラーだ。
常日頃は危険物扱いの満が凄まじく、女の子として見えてしまった。
「赤城にも可愛いとこあるんじゃのう。」
「うん、あれは赤也が惚気まくる訳だ。」
幸村、仁王、柳、赤也は変わらないだろうが、残りが意識しすぎないか。それが大の付く問題だと把握するまで少々時間を要した。
「柳生先輩、先日お借りした本をお返しします。とても面白いので続編を買ってみますね。」
「あ、はい。これは私も好きなので嬉しいです。」
動揺した柳生達に、赤也が嫉妬を抑えられずに引き剥がす事が多々あった。
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