螢惑は芥子に眠る | ナノ
日常的に物騒
傍から見ている限り、女の子2人が大層微笑ましく会話を楽しんでいるように思える。だが、かれこれ1時間。
いい加減にしろと言いたくもなるだろう。
「でも、赤城さんって何の練習をするつもりだったの?」
「的当てよ。やっぱり狙ったところに出来るよう練習しなきゃ。危ないもの。慣らさなきゃ出来ないし、彼氏も心配してるから。」
嘘ではないが、包み隠さず言っている訳でもない。入学後はこの手で切り抜けてきたのだ、同い年の杏を丸め込むなど朝飯前。
「そんなにコントロール苦手なの?」
「と言うよりは慣れていないから、間違ったら大怪我させてしまうかも知れないから不安なの。…あ、もうこんな時間だわ。晩御飯当番だし、私はそろそろ帰るわね。」
携帯の時計を見て、練習場所探しどころではなくなった事に少々焦りを覚える満は本当の事を告げる。
「あ、本当だ。良かったらアドレス交換しない?一緒にテニスしたいし。」
「勿論。」
にこやかにアドレスを交換し、駅までまた喋り続ける女子中学生2人。同じ不動峰だから、兄経由で満が立海の有名な生徒だと判明するのではと気がついたのは電車内だった。
「…色々失敗した…。」
神尾と鬼ごっこをしてあっさり捕まえる健脚、仁王が見張りにつく程の信用の無さ。全国ニュースで報道された万年筆の立海女子。
青学、氷帝を青ざめさせた事や自分の特技を知られたら色々と厄介だ。
「…とりあえず柳先輩に相談しよう…。」
赤也ならば、当たり前と言いかねない。事の大きさと満の事情をよく知る柳に当たるべきと判断した。
下手をすれば、都内の中学に満の怖さが葉っぱや花までついて出回る。
「…と言うわけ何だけどお母さん、どうしよう?」
「満、確かにお母さんとお爺ちゃん達が鍛えた満の技や足の速さを自慢しないようにとは言ってないわ。因縁のある人もいるから…満の詳しい事を知ってる人以外と本気でプレイしないなら、用具一式は買ってあげる。立海でやっちゃった事は取り返せない。」
「反省します。」
「生かせばいいのよ。お母さんも高校生の時お爺ちゃんにすっごく怒られたのよね。つい本気でバスケットしてラフプレイになっちゃったから。」
血は、争えない。チャンネル争奪戦の最中、やっている事と話している事が素晴らしくかけ離れた流血親子の団欒。
「…とりあえずお父さんの部屋で練習しよ…。」
「壁に穴を空けないようにしてね?」
「この間八つ当たりで病院のベッドの布団切ったお母さんが言うの?」
きっちりその布団を使って練習し、立海レギュラーは翌日恐怖の的当ての的にされる。
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