螢惑は芥子に眠る | ナノ
有言実行も疑惑に


関東大会決勝。即ち立海と青学の正面対決なのだが。青学メンバーの顔色は、あまりよろしいとは口が裂けても言えなかった。

「…リョーマ君、どうしたの?顔色悪いよ?」

「聞かない方が幸せ。ね、桃先輩。」

「あぁ…聞いちゃいけねーな、いけねーよ。赤城の事きれいさっぱり忘れてたぜ…。」

「忘れられるおめでてぇ頭だって事だな。」

「んだとマムシ!?」

「こら、2人共止めないか!赤城さんの言葉を信用するしかないだろう!?」

睨み合いを始めた桃城と海堂を、ごもっともな意見で諫める。…心から信用出来るか否かは別として。
満の一見手品めいた神業を間近で見た河村と菊丸は、ジャージを羽織ったまま震えている。
良く見れば武者震い。相手は王者立海なのだから。
しかしその王者立海は、満の精神的影響力を何とも言えない状況で見ていた。青学メンバーが、あまりにも不憫なのだ。

「…こればかりはフォロー致しかねますね。気持ちはよく解りますが。」

「だよな…赤城に喧嘩売って無事だった訳だし。氷帝も負けて俺らが倒せるとは思ったけど。」

「赤城はちゃんと言ってたよな?スポーツには口出ししないって。」

「ブン太。屁理屈で行くと口は出さないけど手は出すよって考える人がいないと思う?」

成る程、と頷いてしまう一同。
満は、言葉が足りなかったかと自省していた。手も口も出すつもりが無いのである。

「かと言って近付いたら余計怖がりますよね。本当に信用が無いみたいで悲しいです。」

「満は悪くねーよ。勝手に怖がってるあいつらが変なんだ。」

「これしきで試合前に狼狽えるなど青学もその程度と言う事だ。」

「ま、これで負けたら恥じゃな。」

「そうだね。今思いついたんだけど、負けたら赤城さんに試した事が無い文房具で切れるかの実験台になってもらおうか?」

にっこりと柔らかな笑みを浮かべた、幸村のある意味死刑宣告。真田に殴られるよりも、何を使われるのか予想出来ない話だ。

「…興味深いが、赤城に異論は無いのか?」

「特にありません。試した事の無い文房具となると限られますから。上手く使えてもダメージはあまり見込めないです。」

ただし、満の考えるダメージとは殺傷力の有無だ。仕留められなければ意味がない、と育てられた結果。
物騒極まりない英才教育である。軽く、鋭くと多少飛びにくい素材すらも扱う。

「決まりだね。まぁ、何を使うかは俺と赤城さんで決める。ついでに真田の鉄拳も追加しようかな。」

笑顔を保つ幸村に、些か哀れむような視線の満。この決勝には、お互いとんでもないプレッシャーが掛かったのだった。

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