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紅花さん小咄

2011/06/17 12:14


有効活用

怖くないです。


「…何でいっつも手ェ綺麗なんだ?」

右利きの赤也は、国語の授業の度にタオルで汚れた手を拭く。右利きであれば避けられない汚れだ。シャーペンでノートに書くのだから。それに彼女は首を傾げて、さも当然のように言った。

「私両利きだから、国語は左手で書くの。英語とかは右手。汚したくないからね。」

「え。ノート借りる時めちゃめちゃ文字綺麗なんだけど。」

「どちらでも書けるけど、筆跡は違うよ。柳先輩が言ってたし。」

元々極端に癖は無いが、書こうと思えば丸文字も書ける。走り書きも非常に見易いとすら言われる筆跡だ。達筆ではないが、基本的に丁寧に書いている。

「俺も練習しよっかな。」

「左手だけで全部いきなりは難しいと思うよ?お箸もスプーンも慣らさないと、とっさに右手が出るみたい。」

いきなり箸を利き手ではない方で怪我をした訳でもないのに使おうなどと思う時点で、明らかにおかしいのだが赤也は気付かない。

「お箸左手…。」

「魚料理は苦労すると思うな。」

「どうやんの?」

「気がついた頃には当たり前に食べてたから、解らない。ごめんね?」

翌日の授業で、左手でノートを書こうと悪戦苦闘する赤也だったが。
悔しそうな顔で挫折していた。一日二日で両利きになる筈が無いのだが。

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