「ヒソカ」
「ん?◆終わった?」
「あの子ちょうだい」
「ダメに決まってるだろ◆」
イルミが珍しいなあ◆と笑われるが特に気にしない。
「育てたら強くなる」
「だから今ボクが育ててるだろ◆」
手加減してたとは言えまさか一時間も保つとは思わなかった。ゆあの攻撃はなかなかいい。まだまだ一撃一撃は軽いけど音の攻撃はかなりいい線いってる。
反射神経もいいし、スピードもある。コントロールがうまいから絶、から堅、流などへの切り替えが
スムーズで隙も少ない。まだまだ経験不足なとこもあるけど。
「いい暗殺者になる」
「ゆあにその気はないだろうけどね◆」
「…じゃあなんで育ててるの?」
「なんでだろうね?◆」
ヒソカは相変わらず気持ち悪い。なにも考えずに育てるはずはないしどうせ青い果実がどうのうこうのだろ。と、心の中で悪態づく。
…ヒソカなんかに気に入られてゆあはかわいそうなやつだな。と、少しだけ同情した。
「で、ちょうだい」
「あげない◆」
まあ、そうだろうな。と思っていたので三度目は言わない。…そうだな。
「よし。俺もこのホテル滞在しよう」
「ん?◆どんな風の吹きまわしだい?◆」
「勝手にゆあを育てさせてもらう」
「それは構わないけど◆」
「その上で暗殺者に誘おう」
「諦めてないんだね◆」
イルミらしい。と笑われた。まあ、育ててみる価値はありそうだから。それらしく教えるフリして暗殺の極意を教え込もう。ゆあなら鵜呑みにするだろうし。
「マスターのとこ行ってくる」
「はいはい◆」
「あ、例の話し。早めに対処しろよ。」
「わかってるさ◆」
ほんとにわかっているのか…ヒソカはいつもの笑顔を浮かべただけでいまいち読み取れなかった。
ホテルへ帰る前にゆあを盗み見る。休んでいるかと思っていたのに堅を行っていた。…さっきの気にしてるのか。
根性もある。やる気もある。そこまでゆあを突き動かすものがなんなのか少し気になったがどうせ自分には関係ない。と考えるのをやめた。
その夜、ゆあに滞在することを話した。
「えっ、イルミさんホテルに滞在するんですか?」
「そう。いや?」
「嫌ではないです!あの…修行って」
「ああ、みてあげる」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
素直に喜ぶ姿をみて不思議な気持ちになる。なんで暗殺者が一緒のホテルにいるのに、なんで暗殺者の俺に修行みてもらうのに、なんで暗殺者の目の前でこんな笑顔なんだ?
「ほんと変わってるね」
「え、そう…ですかね?」
「うん。だいぶ」
「なっ…!」
こうやって落ち込んで、と思ったら次にはもう笑っていてヒソカに絡まれて怒って、泣いて、笑って。
自分にはない表情。感情。
自分にはいらない顔。気持ち。
「(ヒソカが手元におくのもなんとなくわかる)」
わかってしまう自分も少なからずそういう感情を抱いている?そう思いかけてそんなことはない。と、その考えを捨てた。それはありえない。
「(俺にそういう感情はいらない)」
「(暗殺者に感情は必要ない)」