くろあか | ナノ

 十二話 ドライヤー




「ほんとわかんないな…」
「あの、じゃあ…どちら様ですか?」
「………」

じっ、とみつめられる。…わあ、ほんと大きい瞳。みてると吸い込まれそうなほどに暗い。

表情が全くないので何を考えているのか全然読めなかった。もともとわたしはそういうのは苦手だった。ヒソカさんのこともよくわからない。

「いまさら?」
「え…だって…」
「…はあ。ヒソカに用があってきた。」
「ヒソカさんの…知り合い?」
「聞いてない?」
「ない、です…」

そう。とだけつぶやくと黙りこんだ。…え、会話終了?この沈黙はどうしたらいいの?

時計をみるとまだ9時にもなっていない。このまま二人…というのはやだ。気まずいし、耐えられない。

「あの、夜には戻ると思います。」
「わかった。」
「えっと、わたしはでかけますね?」
「どこに?」
「…森へ」
「ふーん。」

なにを言っても表情が変わらない。お人形さんみたいだなあ…。と考えて男の人にそれは失礼だったかな?と思い直す。

「で、では…」
「何しにいくの?」
「えっと修行に」
「…俺も行っていい?」
「えっ!」
「ダメ?」
「ダメ…ってわけじゃないですけど…」
「そう」

またそれだけ言って黙り込む。えええええ、どうしようううう。ヒソカさんなんかよりもずっとやりにくかった。あの人は変態で変態だけど、ここまで感情が読みにくくはなかった。変態だけど。

「えっと…支度するのでちょっと待っててください」
「うん」

とりあえず、来る気みたいだ。慌てて動きやすい服を用意してバスルームで着替えてドライヤーを持ってくる。

―ブォオオン…

乱暴に風を当ててとりあえずさっさと乾かしてしまおう!と思っていたらドライヤーを取られた。

「……あ、あの?」
「…そんな風にしたら髪が痛む」
「え?あ、はい…」

よくわからず黒い瞳を見つめ返す。ドライヤーを持つ男の人…ちょっと変な図だった。

「ここ」
「?」
「座って」
「は、はい」

ソファーに座るように促されて大人しく座る。するとドライヤーをかけはじめた。なにか言って怒られるのも怖いのでとりあえずされるがままになっておく。

「ドライヤーは頭のてっぺんからかけて」
「…はい」
「同じとこにばかりかけてると熱くなって痛みやすくなるから」
「…あの」
「なに」
「ありがとう、ございます…」

とりあえずお礼だけ言っておく。後ろに立っているので表情はみえない。みたところで無表情なんだろうな、と想像した。

「別に」
「…すみません」
「……せっかく綺麗な髪。もったいない。」
「え」

意外な言葉に振り返ろうとする。

「前向いてて」
「はっはい…」

制止されて前に向き直った。…あれ、なんか意外と優しい…?いやいやいや!そうやって簡単に人を信用するなって散々ヒソカさんに言われたでしょ!

そのままドライヤーをかけてもらって特に会話もなく終わった。

「どこでやるの?」
「えっと、すぐそこの森で…」
「そう」
「………」


また黙ったのでもう諦めることにした。



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