「ん?…また派手にやったな」
「ゆあが思ってたよりも強くて◆」
「…そんなふうにはみえんがなあ」
「人は見かけによらないんだよ◆」
あちこち擦り傷や泥だらけのわたしをみてマスターさんがやれやれとため息をついた。立ち上がって引き出しを開ける。
「ほら、使え」
「!あ、ありがとうございます…!」
消毒液とガーゼ、塗り薬なんかを渡された。ちょっと怖い人かな…って思ってたけど全然そんなことなくて、優しい人だ…ヒソカさん以外の人と関わることがなかったので新鮮で、ちょっとのことがすごく嬉しかった。
「強かろうと女の子なんだからな。」
「わかってるよ◆」
「…の割には結構重いパンチでしたけどね」
「おい」
「手加減はちゃんとしてるよ?◆」
とか言ってるけど!わたしの腕アザだらけなんですけど?!講義したかったがとにかく汗をはやく流してしまいたかったので部屋へと先に戻ることにした。
「はー…疲れた…」
階段がとても長く感じられる。
「(結構動けたな…)」
ヒソカさんが手加減してくれてるとはいえ意外と動けた自分にびっくりした。まあ、ほとんど攻撃は当たってないけど。スパルタで教えてくれたお母さんに感謝しなくちゃ…
ヒソカさんは強い。
まだまだわたしじゃ勝てない。
「(もっと強く…もっと強くならなきゃ)」
傷も痣も痛くない。辛くない。
がんばって強く、強くなるんだ。
拳を握りしめて自分に誓った。
「で、ヒソカはあの子をどうするつもりなんだ?」
「ん?どうって◆」
「生かしてる理由はなんだ?」
「わあストレートだね◆」
マスターも裏の人間だ。
ボクのこともよく知っている。
「んーそうだね…暇つぶし、だよ◆」
「…の割には随分と可愛がってるな」
「そんなことないよ?◆いらなくなったら捨てちゃうし◆」
「…どうだかな」
マスターがやれやれとため息をつく。何をマスターが言いたいのかよくわからなかった。
ただ面白そうだから拾って
暇つぶしになりそうだから育てて
念が使えるから覚えさせて
戦えそうだから戦わせて
それだけ。
…それだけ?
それだけだよ◆
「はやく熟してね…ゆあ◆」