「今日は念について教えようかな◆」
「…念、ですか」
「そう◆知らないんだろ?」
こくこく、とうなずく。
牛乳でパンを飲み込みながらヒソカさんの言葉を待った。
「念…っていうのはオーラ、つまり生命エネルギーを操る能力のことでね◆」
と、長い説明を聞きながら正直なんだそれ、ほんとうに魔法の世界かなんかなのかここは!と叫びたいくらいだったけどぐっとこらえた。
超能力のような力。
知らないうちにそんな力に目覚めていました。と言われて素直に信じられる人間はほとんどいないだろう。
「…聞いてた?◆」
「ふあい、ふみまへん…」
ちがうことを考えていたのがバレたのか
またほっぺたをつねられた。
…痛い痛い!
なんかさっきより強くなってる?!
「人の話はマジメに聞かないとダメだよ?◆」
「うーすみません…」
ほっぺた赤くなってませんか、これ。
じんじん痛むほっぺたをさすった。
「うーん、ゆあは聞くより見るほうがわかる子なのかなー◆」
「(子供扱い!)…まあそうですね」
15歳ってそんなに若くみえるのかな?ヒソカさんにはわたしが子供にみえてるんじゃないんだろうか…
見た所ヒソカさんは20代だしそこまで年の差はないと思うけど。自分が童顔だというのは置いておいて。
と、また思考が脱線しそうになるが目の前にグラスをトン、と置かれたので注目する。
「例えばこのグラス。これをこのバターナイフで切れると思うかな?◆」
「バターナイフで?グラスを?」
じ、とバターナイフをみつめる。
ふつうのナイフとはちがって刃先が丸いからこれでものを切るのは無理そうだ。グラスもいたってふつうのグラス。叩けば割るかもしれないが切れる、とは思えない。
「無理です。」
「そうだね◆でもこのナイフに念を注ぐ…」
じーっとみていると白い光のようなものが
バターナイフの表面をおおった。
「?なんですか??この白い光?」
「ん?凝が使えるのかい?」
「え?ぎょう?」
「…まあいっか◆」
ヒソカさんがグラスに視線を戻したので
追求することもなく視線を戻す。
「その光がボクの念だよ。」
「へー目にみえるんですねー」
「普通はみえないんだけどね◆」
「え、そうなんですか?」
「うん◆で、このナイフにはいまボクのオーラが纏わせてある◆このナイフでグラスを切ると…」
―スッ パキンっ!
「?!」
「ほうら、このとおり◆」
軽くグラスを切るようになぞっただけなのに真ん中からきれいに割れるグラス。しかも切った表面は刃物のようになめらかでバターナイフで切ったとは思えない。
「…びっくりです」
「これは周っていう応用技で、ナイフに自分のオーラを纏わせて切れ味を強化しているんだ◆」
「へええ…これがあれば無敵じゃないですか!」
「そんなことはないよ◆」
「?」
今度はそのバターナイフをなにを思ったか
ヒソカさんは自分の腕へと振り下ろした。
「っな?!あぶ…っ?!」
―ガキィンッ!
ざっくりグラスのように切れてしまう…
かと思いきや今度はバターナイフの方が
簡単に折れてしまった。え?!なんで?!
「いまボクは硬で腕にオーラを集めて防御力を上げているんだよ◆」
「…びっくりした!心臓に悪いです!」
ざっくり、血がどばーっ!
なんてことになったらトラウマものだ。
「ほんとに念ってすごいんですね…」
「ゆあも使ってるんだけどね◆」
「…実感わきませんけどね」
こんなすごい力を無意識でやってるなんて
そんなの信じられなかった。
だってわたしふつうの女の子だし…
「んーそれも実践してみる?◆」
「?!なにをいっ」
―すっ
とバターナイフが振り下ろされる。
が、想像してた痛みはおとずれなかった。
「っ?」
「ほら、みてごらんゆあ◆」
おそるおそるヒソカさんの手元をみるとバターナイフは確実にわたしの頭に落とされている。だけどよくみると白い光が膜のようにわたしの体を覆ってバターナイフを弾き返していた。
「ボク、これでも結構本気でやってるんだけどね◆それをこうも簡単に弾き返されちゃうんだもん◆」
「…っあ、う」
ぽいっとバターナイフをヒソカさんが捨てたので
緊張が一気にとける。こ、こここ怖かったー!!!
「っもう!なにするんですか!いきなり!怖かったじゃないですか!」
「ん?だってゆあこっちのがわかりやすいだろ?◆」
ニヤニヤ笑っていてむかつく…!
でも言いかえすのも怖いので黙った。
…でもほんとにわたし念使えてるんだ。
目の前でみてようやく実感した。
まだ自分で使っている、とまではいかないけどヒソカさんの力を跳ね返すぐらいだからけっこう強い力なのかな?
基準が全くわからないのでよくわからなかったがとりあえず防御は安心していられるみたいだから痛い思いはあまりしなくてすむかも?