苺とチョコレート
どっちも素敵でどっちもいい。
え?プリンですか?
「あーもう…朝から疲れた…」
お昼前、ため息をつきながらのんびりと街を歩く。みんな仕事をしている時間だからか街はいつもの活気はなく静かだった。
「ほんと…あの二人なんとかならないかな…」
今日の朝のことを思い出す。朝、わたしは凄まじい殺気で目が覚めた。ガバッと勢いよく起き上がる。時計を確認するとまだ朝の4時だった。
「(なに?…敵、じゃない…ヒソカさん?)」
その禍々しいオーラはヒソカさんのもので絶をしてそっとリビングを覗くとそこにはイルミさんとヒソカさんが睨み合うように対峙していた。
二人は静かに、でも確実に言い争いをしていて二人とも殺気立っていた。
「なんでヒソカに許可を取らないといけないの?」
「ゆあの所有者はボクだからね。勝手なことされると困るよ◆」
「ゆあは別に困ってないし」
「キミね…人に仕事押し付けてその間に忍び込むとか人としてどうなの?◆」
「忍びこんでない。ちゃんとゆあには許可とったし」
「だからボクの知らないとこで好き勝手するなよ◆」
「ヒソカは関係ない」
扉を少しだけ開けて耳を澄ませると
そんな会話が聞こえてきた。
「(ああ…またかぁ)」
はあ…とため息をつく。こういうやりとりをみるのは何回目だろう?と呆れる。わたしの名前が出ているので無視するわけにもいかず部屋に戻ってカーディガンを羽織ってそれからリビングへと出る。
「あんまり勝手が過ぎると怒るよ?◆」
「別にいいよ」
「ってちょっと!な、なに武器出してるんですかっ!?」
―バッバッ!
リビングに出た瞬間、ヒソカさんはトランプをイルミさんは針を構えていたので慌てて間に割り込んで武器を取り上げる。
「あ、ゆあおはよう◆」
「おはようございます…って!ちょ、ちょっとくっつかないでください!」
「ゆあ寝癖ついてる可愛い◆」
「………ヒソカ」
「ひぃ…イルミさん殺気!殺気抑えてください!」
目が合った瞬間ヒソカさんがぎゅ、と抱きついてきた。香水の匂いとヒソカさんの匂いが香ってきてクラクラする。慌ててそれを肘で殴りながら引きはがす。
イルミさんからは凄まじい殺気。背筋がゾクゾクして冷や汗が流れる。わたしを挟んでこういうのやめてもらえないですかね…!
「イルミに何もされなかったかい?◆」
「現在進行形でヒソカさんにセクハラを受けてます…」
「ボクはいいの◆」
「よくない。早く離れろ」
「イ、イルミさん?とりあえず、とりあえず針をしまいましょう?ね?」
後ろからはヒソカさんのセクハラ。前からはイルミさんの殺気という眠気が吹き飛ぶすばらしい目覚めですね。そのあと朝ごはん作ってる時もヒソカさんのセクハラはやまなくてイルミさんはずっと不機嫌だし、耐え切れなくなってこうして街へと逃げてきたわけです。はい。
「修行見てもらいたかったけど、家には戻りたくないし…うーん」
とりあえず行くところもないし『喫茶店アンブレラ』にでも顔を出そうかなーとのんびり歩く。
「こんにちわー」
「お、ゆあじゃねぇか」
「うわ、フィンクスさんだ…」
「うわってお前ひでぇな…」
お店に入るとお客は一人だけだった。シャルの仕事仲間だと言うフィンクスさん。眉毛がなくて目つきが悪いまるでヤンキーみたいな人だ。フィンクスさんもいつの間にか常連になっていて見た目の割に面白くていい人だ。
「ゆあアンタ今日来れないって言ってたじゃないの」
「いやーいろいろありまして…普通にお茶しに来ました」
「そ」
モアさんが裏から出てきた。とりあえずホットココアを注文する。忙しそうだったら働こうかな、と思っていたけど…のんびりしよう。
「どうした?」
「あー…喧嘩に挟まれて大変な思いをしました」
「ああ、そりゃおつかれ」
「もうね、どうして仲良くできないんですかね?」
「なんだまた例の兄か?」
「…そうです」
フィンクスさんやシャルにはヒソカさんのことを話せないので兄、と嘘をついていた。よく愚痴を聞いてもらったりしてる。
「朝から疲れました…」
「お前も大変だなぁ」
「はいココア、クリーム多めね」
「わー!ありがとうございます!」
「…お子様」
フィンクスさんがぼそっと言ってくるのでとりあえず睨んでおく。このクリームが!大事なの!
「フィンクスさんお仕事は?」
「ん?ああ、明日でかい仕事があるなぁ」
「へぇ…じゃあシャルも忙しいですか?」
「あいつは今日も徹夜してたなぁ…」
「そうですか…最近全然お店に来なかったので…」
「「もう無理…死ぬ…」って泣き言いってやがったから喝入れてやったけどな」
「うわぁ…フィンクスさんひどい!」
「あいつの仕事だからなぁしょうがねーだろ」
あんまり詳しく聞いたことはないけどこの二人の仕事ってなんなんだろう?まあ、聞いても教えてくれないだろうし深入りする気もないんだけど…。このぐらいの距離感がなんとなく楽でわたしとしてもちょうどよかったりするんだよね。
「あ、ゆあこの間言ってた新作メニュー味見する?」
「します!」
「ハッハッハ!即答かよ!」
「フィンクスさんにはあげません…!」
「おいおいひでーな」
「二通り作ってみたんだけど…苺のと、チョコのと」
「うわー!美味しそうですね!」
「二つも食ったら太るぞ。だから一つ俺によこせ」
「いやです!」
なんて、わいわい騒ぎながら喫茶店でのんびりとしてフィンクスさんはお昼を食べてから「じゃ、戻るわ」と帰ってしまった。わたしものんびりお茶してからモアさんの仕事をちょっと手伝ったり。このあとどうしようかなーなんて考える。
「あ、そうだモアさん」
「んー?」
「この辺って美術館多いですよね」
「まあね。この街は「芸術の街」なんて呼ばれたりもするから」
「へえ…だから美術館が多いんですねー」
「金持ちが多いってのもあるけどね」
「あはは…」
「そういえば、最近隣り町の美術館の館長が殺されたみたいね」
なんと答えればいいのか分からずに曖昧な返事をする。ニュースにもなっていたけどこの間の美術館でのことだろう。
「しかもその美術館の一番の目玉だった絵画が盗まれていたらしいわよ」
「…え?」
「盗賊…幻影旅団の仕業じゃないかって」
「…幻影旅団」
わたしたちの依頼は館長の殺害だけだったから盗まれた、と聞いて驚く。あのとき同じ場所に居たなんて…。警戒は怠ってなかったけど全然気付かなかった。
「今度は別の美術館も狙われるんじゃないかって、噂になってるしね」
「幻影旅団…その人たちは何者なんですか?」
「(…さっきまでアンタとわいわい騒いでたあの男がそうよ…って言ったらどうするのかしら)
…そうね、お金さえ出せば情報を売ってあげるわよ」
「え、遠慮します…」
「そ」
モアさんはニヤリといたずらっぽく笑う。イルミさんが高い、というぐらいだからわたしなんかじゃ到底払えないだろう。まあ、いっか。明日その人たちと戦うかもしれないし。
「じゃあ、そろそろ帰りますね」
「ん。休みなのに手伝ってもらって悪かったわね」
「いいえー試食分働いただけですから!」
「…ゆあ」
「はい?」
「…もっと危機感を持ちなさい」
「え?」
「アンタ、危なっかしいのよ」
べしっ、と頭を叩かれる。
一体いきなりなんなんだろう…。
「いい?あんまり気を許しちゃダメ」
「は、はい…」
「最近危ないんだから。鍛えていようが、気をつけなさいよ」
「…わかりました」
なんか、お母さんみたいですね。と言ったらさっきよりも強く頭を叩かれました。痛い…。でもこういうのなんだか懐かしくってちょっと嬉しい。このあとはどうしようかな、と思いながら喫茶店をあとにする。
「美術館…かぁ」
興味はないけど、どうせ暇だし行くところもないし…よし、思い立ったら即行動!そう思いながら駅へと歩き出した。
どっちも素敵でどっちもいい。
え?プリンですか?
「あーもう…朝から疲れた…」
お昼前、ため息をつきながらのんびりと街を歩く。みんな仕事をしている時間だからか街はいつもの活気はなく静かだった。
「ほんと…あの二人なんとかならないかな…」
今日の朝のことを思い出す。朝、わたしは凄まじい殺気で目が覚めた。ガバッと勢いよく起き上がる。時計を確認するとまだ朝の4時だった。
「(なに?…敵、じゃない…ヒソカさん?)」
その禍々しいオーラはヒソカさんのもので絶をしてそっとリビングを覗くとそこにはイルミさんとヒソカさんが睨み合うように対峙していた。
二人は静かに、でも確実に言い争いをしていて二人とも殺気立っていた。
「なんでヒソカに許可を取らないといけないの?」
「ゆあの所有者はボクだからね。勝手なことされると困るよ◆」
「ゆあは別に困ってないし」
「キミね…人に仕事押し付けてその間に忍び込むとか人としてどうなの?◆」
「忍びこんでない。ちゃんとゆあには許可とったし」
「だからボクの知らないとこで好き勝手するなよ◆」
「ヒソカは関係ない」
扉を少しだけ開けて耳を澄ませると
そんな会話が聞こえてきた。
「(ああ…またかぁ)」
はあ…とため息をつく。こういうやりとりをみるのは何回目だろう?と呆れる。わたしの名前が出ているので無視するわけにもいかず部屋に戻ってカーディガンを羽織ってそれからリビングへと出る。
「あんまり勝手が過ぎると怒るよ?◆」
「別にいいよ」
「ってちょっと!な、なに武器出してるんですかっ!?」
―バッバッ!
リビングに出た瞬間、ヒソカさんはトランプをイルミさんは針を構えていたので慌てて間に割り込んで武器を取り上げる。
「あ、ゆあおはよう◆」
「おはようございます…って!ちょ、ちょっとくっつかないでください!」
「ゆあ寝癖ついてる可愛い◆」
「………ヒソカ」
「ひぃ…イルミさん殺気!殺気抑えてください!」
目が合った瞬間ヒソカさんがぎゅ、と抱きついてきた。香水の匂いとヒソカさんの匂いが香ってきてクラクラする。慌ててそれを肘で殴りながら引きはがす。
イルミさんからは凄まじい殺気。背筋がゾクゾクして冷や汗が流れる。わたしを挟んでこういうのやめてもらえないですかね…!
「イルミに何もされなかったかい?◆」
「現在進行形でヒソカさんにセクハラを受けてます…」
「ボクはいいの◆」
「よくない。早く離れろ」
「イ、イルミさん?とりあえず、とりあえず針をしまいましょう?ね?」
後ろからはヒソカさんのセクハラ。前からはイルミさんの殺気という眠気が吹き飛ぶすばらしい目覚めですね。そのあと朝ごはん作ってる時もヒソカさんのセクハラはやまなくてイルミさんはずっと不機嫌だし、耐え切れなくなってこうして街へと逃げてきたわけです。はい。
「修行見てもらいたかったけど、家には戻りたくないし…うーん」
とりあえず行くところもないし『喫茶店アンブレラ』にでも顔を出そうかなーとのんびり歩く。
「こんにちわー」
「お、ゆあじゃねぇか」
「うわ、フィンクスさんだ…」
「うわってお前ひでぇな…」
お店に入るとお客は一人だけだった。シャルの仕事仲間だと言うフィンクスさん。眉毛がなくて目つきが悪いまるでヤンキーみたいな人だ。フィンクスさんもいつの間にか常連になっていて見た目の割に面白くていい人だ。
「ゆあアンタ今日来れないって言ってたじゃないの」
「いやーいろいろありまして…普通にお茶しに来ました」
「そ」
モアさんが裏から出てきた。とりあえずホットココアを注文する。忙しそうだったら働こうかな、と思っていたけど…のんびりしよう。
「どうした?」
「あー…喧嘩に挟まれて大変な思いをしました」
「ああ、そりゃおつかれ」
「もうね、どうして仲良くできないんですかね?」
「なんだまた例の兄か?」
「…そうです」
フィンクスさんやシャルにはヒソカさんのことを話せないので兄、と嘘をついていた。よく愚痴を聞いてもらったりしてる。
「朝から疲れました…」
「お前も大変だなぁ」
「はいココア、クリーム多めね」
「わー!ありがとうございます!」
「…お子様」
フィンクスさんがぼそっと言ってくるのでとりあえず睨んでおく。このクリームが!大事なの!
「フィンクスさんお仕事は?」
「ん?ああ、明日でかい仕事があるなぁ」
「へぇ…じゃあシャルも忙しいですか?」
「あいつは今日も徹夜してたなぁ…」
「そうですか…最近全然お店に来なかったので…」
「「もう無理…死ぬ…」って泣き言いってやがったから喝入れてやったけどな」
「うわぁ…フィンクスさんひどい!」
「あいつの仕事だからなぁしょうがねーだろ」
あんまり詳しく聞いたことはないけどこの二人の仕事ってなんなんだろう?まあ、聞いても教えてくれないだろうし深入りする気もないんだけど…。このぐらいの距離感がなんとなく楽でわたしとしてもちょうどよかったりするんだよね。
「あ、ゆあこの間言ってた新作メニュー味見する?」
「します!」
「ハッハッハ!即答かよ!」
「フィンクスさんにはあげません…!」
「おいおいひでーな」
「二通り作ってみたんだけど…苺のと、チョコのと」
「うわー!美味しそうですね!」
「二つも食ったら太るぞ。だから一つ俺によこせ」
「いやです!」
なんて、わいわい騒ぎながら喫茶店でのんびりとしてフィンクスさんはお昼を食べてから「じゃ、戻るわ」と帰ってしまった。わたしものんびりお茶してからモアさんの仕事をちょっと手伝ったり。このあとどうしようかなーなんて考える。
「あ、そうだモアさん」
「んー?」
「この辺って美術館多いですよね」
「まあね。この街は「芸術の街」なんて呼ばれたりもするから」
「へえ…だから美術館が多いんですねー」
「金持ちが多いってのもあるけどね」
「あはは…」
「そういえば、最近隣り町の美術館の館長が殺されたみたいね」
なんと答えればいいのか分からずに曖昧な返事をする。ニュースにもなっていたけどこの間の美術館でのことだろう。
「しかもその美術館の一番の目玉だった絵画が盗まれていたらしいわよ」
「…え?」
「盗賊…幻影旅団の仕業じゃないかって」
「…幻影旅団」
わたしたちの依頼は館長の殺害だけだったから盗まれた、と聞いて驚く。あのとき同じ場所に居たなんて…。警戒は怠ってなかったけど全然気付かなかった。
「今度は別の美術館も狙われるんじゃないかって、噂になってるしね」
「幻影旅団…その人たちは何者なんですか?」
「(…さっきまでアンタとわいわい騒いでたあの男がそうよ…って言ったらどうするのかしら)
…そうね、お金さえ出せば情報を売ってあげるわよ」
「え、遠慮します…」
「そ」
モアさんはニヤリといたずらっぽく笑う。イルミさんが高い、というぐらいだからわたしなんかじゃ到底払えないだろう。まあ、いっか。明日その人たちと戦うかもしれないし。
「じゃあ、そろそろ帰りますね」
「ん。休みなのに手伝ってもらって悪かったわね」
「いいえー試食分働いただけですから!」
「…ゆあ」
「はい?」
「…もっと危機感を持ちなさい」
「え?」
「アンタ、危なっかしいのよ」
べしっ、と頭を叩かれる。
一体いきなりなんなんだろう…。
「いい?あんまり気を許しちゃダメ」
「は、はい…」
「最近危ないんだから。鍛えていようが、気をつけなさいよ」
「…わかりました」
なんか、お母さんみたいですね。と言ったらさっきよりも強く頭を叩かれました。痛い…。でもこういうのなんだか懐かしくってちょっと嬉しい。このあとはどうしようかな、と思いながら喫茶店をあとにする。
「美術館…かぁ」
興味はないけど、どうせ暇だし行くところもないし…よし、思い立ったら即行動!そう思いながら駅へと歩き出した。