「はっ…ははは!馬鹿が!」
「っう…」
目の前には銃を構えたマルド。
…油断した。まだ生きていたなんて。
あれほどイルミさんに言われたのに!
―ガッ! 「ぐあっ!」
思いっきりお腹を蹴られる。
痛い。痛い。痛い。
何発かそのまま蹴られる。
お腹も、足も、痛い。
吐き気と痛みで念の発動が遅れる。
「殺してやる!殺してやる!」
「ぐぅ…あっ…がはっ」
「殺してやる!殺してやる!!」
「うっ…ぐ」
前髪を掴まれて持ち上げられた。頭に銃を当てられる。冷たい感触。背中を伝う汗。汚いマルドの顔、声。ああ、もう、気持ち悪い。
「ははははは!」
「………―い」
「ああ?!なにブツブツ言ってやがる!!」
ぐいっ、と頭を無理やりあげられる。…この距離なら外すこともない。念で喉を強化する。
「『ささやく妖精』……【狂】」
「っあ?…あ、ああああ…ああ」
ぽつり、とつぶやけばマルドは耳から目から鼻から口から血を吐いてどさり…と崩れ落ちた。解放されるが受身も取れずに重力に従って倒れた。
血だまりの中に転がる。むせ返るような血の匂い。冷たい、熱い、痛い、気持ち悪い、頭が軋む。
「(念…使う気なかったけど)」
「(っう…足、動かない、痛い)」
「(お腹…骨は折れてない、けど…痛い)」
立ち上がろうとするが、力が入らない。
「(…イルミさん、に怒られるだろうな。)」
「(……ダメ、意識、飛ばしちゃ)」
だんだん視界が暗くなっていく。
意識を手放す直前に、誰かに抱きかかえられた気がしたが確認する前に目の前が真っ暗になった。
「…全く、困った子だなあ◆」