「かっ、金か!?金が目当てなのか?!」
「………」
「誰に頼まれた?!い、いっいくらでも出すぞ…?!」
この人は…何を言っている?
仲間を盾にして、自分は助かっておいて金を出す?金を出すから…命を助けろと?
その言葉に目の前が真っ赤になる。頭に血が昇ったのだろう。顔が、体が、目が熱かった。ナイフを握る手に思わず力がこもる。
「なっ、なんだその眼はっ…」
「………」
「いくらだ?!いくら欲しい?!」
「人の命は、お金では買えません」
「っバカか!金だよ!!世の中は金がすべてなんだよ!!」
醜い笑顔。恐怖で引きつって汚い。
声も聞きたくなかった。
「黙って」
「…!」
一瞬でマルドの背後に回る。
そのままナイフを振り下ろした。
―ザシュッ! 「ぎ、やああああ!」
軽く振り下ろすだけで簡単に肉へと食い込むナイフ。刺した傷口から血が吹き出た。思いっきり返り血を浴びるが気にも止まらなかった。
どさり、と崩れ落ちるマルド。それを少しだけ冷めてきた頭でぼーっとみる。
「(人の命はお金では買えない…)」
「(なのに、こんなに簡単に死んでしまう)」
…ヒソカさんもいつかは
わたしがいらなくなって、
こんな風に、簡単に、
殺してしまうのかな…
動かなくなったマルドと自分の姿が一瞬重なる。うえっ、と今まで平気だったはずの吐き気が襲う。
「(ダメだ…気持ち悪い…)」
視界が少し揺れた。口元を手で抑える。ナイフが手から滑り落ちた。
「はやく…帰ろ、う…」
視界も揺れる。気持ち悪い。
血の匂いで吐きそうだ。
はやくここから出よう。
そう思って出口へと一歩踏み出した。
瞬間
―ダァン!! 「っう…?!」
銃声。
なんで、なにが、どうして
誰が、マルド…生きて…?!
「ぎ…っ痛、い」
考えを巡らせていると遅れてズキリ、と太ももが痛む。みると赤く、じわりと血が滲んでいた。立っていられないほどに痛い。
体制を保てずに
ぐらっ、と視界が反転する。