あの日から暫く経った今日。オラは一人で隣村に来ていた。今更此処に来て得るもんなんかほとんどなかった。けど、それでもやっぱり自分達の一揆さ前にして、自然と足を運んでた。これはオラなりの決意でもあった。見放しちまった、隣村の奴らがどんな思いで死んでいったのか。オラ達が必ず無念を晴らしてやるから。いろいろと思いながら足を進めていく。

はっきり言ってオラが今言ってることはずるい。死んでいった皆からしてみれば、今更遅いと思うし、随分虫のいい話だと思う。でも、やっぱりオラの中で償わずにはいられなかった。こうでもしなきゃ、気が済まねえ。結局、自己満足にしかならねえけど。でも、それでもオラはこうしてあの日から久しく足を踏み入れることのなかった村さ再び来たんだ。

オラが一人で隣村に行くのを皆は止めた。行くな、そう言った村の皆は何処か冷めた目をしていた気さして、オラは怖くなった。皆が何を考えているのか分からなかった。なしてあんなに村同士、手を取り合い支え合って一緒に共存して来た仲間だったのに、こんなにもすっぱりと切り捨てるのかその時のオラには理解出来なかった。

でもそんな幸せな日々さ切り捨ててまで皆がオラを止めた理由が此処に来てやっと分かった。あの日あったことをこの目でしっかり見てたにも関わらず、何処かそれを信じられないでいたオラが。生き延びて助けさ待ってる人がいるかもしれないなんて淡い期待を抱いてたオラが、現実さ見て傷付かない為に止めてたんだってことに。

オラはなんて馬鹿なんだろう。勝手な正義感で薄情だとまで感じ、村の皆の言葉に聞く耳を持たないで、怒りのまんま此処まで来て、傷付いてから今になってやっと分かって…。いっつもそうだ。いっつもオラは遅いんだ。今だってそう。目の前に広がった光景に結局傷付いて、耐え切れなくて泣くばっかり。


「…う、あ…」


しっかりと声が出ない。これは恐怖からなのか、悲しみからなのかなんてオラには分からない。ただ一つ言えるのは、オラは自分の不甲斐なさにいちばん腹が立ってた。非力な自分が悔しくて、いろんな色の感情でぐちゃぐちゃになったオラの頭ん中はいつの間にか真っ黒く塗り潰されていた。

真っ直ぐと見渡せば涙でぼける視界に映る仲間だっただろう骨の山。焼き果て、原型さ留めてないくらいに散乱した土地。土は血を吸って独特の色になっていて、焦げ臭い匂いと、むせ返るような血の匂いさ村に充満させていた。あんまりにも衝撃的なそれはオラの頭さ麻痺させてく。悪くなった気分はなかなか治らなくて、オラはただ押し寄せる嘔吐感に堪えた。

なんだかそれがいくら謝たって消えることのない罪意識と似てる気がしてオラは唇さ噛んだ。鼻がつんとして、目頭が熱くなってくる。だんだん瞳に張った薄い膜が厚くなって、自然と零れ落ちる。オラが泣いたところで何の意味も無いと分かってるのに無性に泣きたくて、ただ赤ん坊みてえに大声で泣いた。

オラは最低だ。だってこうして泣いたり、謝ったりしてる今だって、これがオラ達の村じゃなくて良かったって頭の端っこで思ってるんだから。


泣き出しそうな空の下
どうすればいいの




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