ふと目の前が白くというべきなのか、辺り一面が何と言うかうっすらと明るくなったような気がした。そんなやわやわとした柔らかな明るさは、次第に目がちかちかと痛くなる程に爛々と輝きを放ち始めた。

あまりにも強くなってきた光に思わず眉をひそめて顔をしかめる。何故なら、目を閉じているにも関わらず問答無用だとでも言うかのように、光は私の目を瞼越しに刺激してくるのだ。一体何の嫌がらせだ。一向に収まる気配を見せないそれは、本当に容赦なく私に降り注ぎ続ける。それはまるで、スポットライトを直接浴びたようなものだった。

そんな視界の暴力により私の気分は大暴落していく。有り得ない程の光に当てられているせいなのか、目を閉じている筈なのに馬鹿みたいに気分が悪くなり、くらくらと酷い眩暈などの症状を体が訴えた。小さく溜め息を吐き、私は頭痛を覚えながらも先ずは状況整理が先だと判断を下した。

先ず一番の疑問は、今この私が置かれている状況は何だということだった。奇妙な浮遊感と眩し過ぎる光の雨。全く持って意味が分からない。何故今、現在進行形で私はこんな目に合っているのだろうか。いくら考えても理解しがたい自身に起こるこの状況に幾分か気分が害される。一層頭が痛いものだ。

ああ、やだやだと私は手を蟀谷へと持って行く。するとそこで初めて気付く。体が、ひどく重たいのだ。それも尋常でない程に。自分の体の筈なのにまるで鉛のように重く、怠い。比喩表現ではなく本当に。だがその中にもほんの少しの快感があり、ひどく不可思議な感覚だった。

例えるなら風邪で寝込んでいた時、寝て起きたような起きぬけのあの感覚に近い。あの睡魔と熱っぽさという多くの人類にとって永遠の敵であるそれと、朝や目覚めという現実に揺さ振られまどろみの中佇むような。そこに来て、これは夢なのかもしれないと思った。私は今、甘美な睡魔からの誘惑と目覚めと言う受け入れがたい現実との境界線をいったり来たりしているのかもしれない。だが、吐き気や痛みを感じている時点でそれはない。

まあ何にしろ、小鳥の囀りで目覚めを迎えるようなメルヘンチックで爽快な目覚めとまるで縁のない低血圧な私にとってみれば、今の現状は不快なことこのうえなかった。この妙に慣れぬ気味悪い感覚に睡魔との格闘どころではなくなり、普段ならば境界線をぐらつき甘い罠へと自ら傾いてしまう所だがそうはいかず、今の私はそんな境界線などとうに越え、次に出現した怒りの境界線を突き破ろうとしていた。

あまり気が短い方ではない私だが、かといって長いかと問われればそうでもない。あまりに不愉快窮まりない状況に置かれ、我慢に我慢を重ねていた私は我慢の限界が来ていた。だが怒りをあらわにしたところで一向によくなる訳でもなければ、治る気配すら見せない体調。冷静に判断出来ているからこそ腹立たしく、そんな状況に自身の眉間がぐっと寄るのが分かった。最近目付きがきついと言われるのはこの仕種がいけないのだと思う。そう思えば一応私も女な訳でいかん、いかんと慌てて力を抜いた。

なんだかどう頑張っても私の望む結果には行き着かないことが薄々分かり、既に自棄が回っていた私は最後の抵抗と言わんばかりに意地でももう一度寝てやること決意した。しかし、現実というのはどうしてこうも上手くいかないのだろうか。決意して試みたものの、私の努力は見事。空回りするかのように、そう思えば思う程虚しくも意識は浮上していった。

人というのは何でこう…必要のない時ばかり、普段なら絶対に起こさないような行動をとるのだろうか。それでいて必要な時程その力を発揮しないのだから、本当につくづくタイミングを誤っているなと思う。というより、誤っている依然の問題で出て来るタイミングを完全間違えている気がする。自身の現在進行形で使われているとてつもなく意味のない覚醒に、私は妙な敗北感を覚えた。


闇の中から光へと
解き放たれつつある私



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