「みんなー、トリックオアトリート!」
「ん…あんらあ、可愛い格好しちゃって!」

日も完全に沈み、窓の外に煌びやかなネオンが眩しい。某国某所のアジトで他愛も無い世間話に時間を費やしていたルパンは、突然開かれたドアから飛び込んできた人物を見て目を輝かせた。自分にとって何ら面白みの無いルパンの話に耳を傾けていた次元や五ェ門も、その人物…名前を見て、ほお、だの、ん?だの声を漏らす。三人の反応に名前は満足したのか、室内の中央に置かれたソファに意気揚々と腰を降ろした。
ふわふわと髪を巻き、普段より少しだけ濃いルージュ。とんがり帽子に長くてぼろぼろのマントを羽織った姿は、どうやら魔女を模している様だった。

「そうか、今日はハロウィンだったな」
「はろうぃん?」
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、ってアレだ」
「む…可笑しな文化があるのだな」

生粋の日本人である彼が西洋の文化を知らないのは、致し方ない。(五ェ門からしてみれば)奇天烈な格好をした名前を、彼はまじまじと見詰める。そんな視線も快感だと言わんばかりに、彼女は得意げに笑んだ。
一方ルパンは、部屋の隅に置かれた冷蔵庫を開けて何やらごそごそ。名前から視線をそちらに寄越した次元。楽しげに揺れる相棒の背中を見て数秒、その行動の意図が読めて呆れた様に溜息を吐いた。何であいつは、こうも女に弱い。

「ねえ五ェ門、似合ってる?」
「その奇妙な格好が似合うと言われて、お主は嬉しいのか?」

何時の間に彼女の横に移動した五ェ門は、眉間に皺を寄せて質問に質問で答えていた。何とも彼らしい、女心を分かっていない応答である。
当然の如く機嫌を損ねた名前が、ふいとそっぽを向く。その顔の向いた方向、五ェ門と反対の位置に、色とりどりの菓子を抱えたルパンがどっかりと座った。途端嬉々とした表情を浮かべる名前。女はこれだから…次元は静かにボルサリーノを深く被り直した。

「はい名前ちゃーん、ぜーんぶ君のもの」
「やった、ルパン大好き!」

どさどさと音を立ててテーブルに落とされるクッキーにキャンディ、ビスケットやチョコレート。漂う甘ったるい匂いに五ェ門が顔をしかめた。「準備しておったのか」「名前ちゃんが考えることなんてお見通しなんだよねえ、オレサマ」包み紙を破いては放り投げる彼女の横で、したり顔のルパン。「全く、敵わぬ」ルパンにも、この鼻を擽る匂いにも。五ェ門は腰を上げ、窓際の床に座り直した。外の空気が恋しいらしい。
どうにも堅物なんだからあ、心の中でルパンは呟く。

「ルパンにも一個あげるー、あーん」
「あーん」

かぼちゃを模ったキャラメルが、彼女の指からルパンの口へ。お返しと言わんばかりに今度はルパンの指からマシュマロが彼女の口へ。果たして何時まで続くのか、甘えたがりの我侭娘に甘やかしのスケコマシ。ある意味相性が悪かったに違いない。少なくとも、蚊帳の外の二人にとってはそうだろう。




Sweet Sweet






20111018
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -