「お父さんは反対なんだけどなあ、年頃の男女がひとつ屋根の下で暮らすなんてなあ」
「こうなったのは誰のせいなのよ」
「お父さんだなあ」

運転席と助手席の会話をぼんやり聞きながら、携帯画面に映し出されたメールを読む。せっかくの夏休みなのに、とか、お土産よろしくね、とか、色んな感情が入り混じった文章は私の目から入りそのまま口へと抜けていく。それを機嫌が悪いと悟ったのか、お父さんは慌てたようにご飯でも、と口にした。私が返事をする前にお母さんが呆れた口調で言う「夕方までにはあっちに着きたいのよ、だめ」。項垂れた肩を見ると少し笑えた。

現在の状況を解説してみる。
よく分からないけどいい会社のいい位置に勤めているお父さんは、この夏に海外出張が決まったらしい。私とお母さんも連れて行こうとしたらしいけど、飛行機とかホテルの関係で同行は一人までと決まってるそうで。そこで話し合った結果、お母さんが一緒に行くことになった。私が海外を嫌がったのだ。まともに英語が喋れないのに海外に行くのは、正直怖い。
するとお母さんが駄々を捏ね出した。「なまえひとり置いていくのは怖いわ、女の子なのよ」「じゃあどうするんだ」「どこかに預けましょう」そうしてたくさんの候補を出し、交渉の後快く預かってくれる家が見つかったらしい。

「いい人たちだからね、なまえも知ってるでしょ」

そう言われて教えられたのは"金剛"という苗字。私が幼稚園の頃、近所に住んでいた家族。私と同じ年の双子がいるそうで、よく遊んでもらってたとか。
正直なところまったく記憶がなくて首を傾げたけど、母が電話で話したところ向こうは私を覚えてるらしい。驚きの記憶力。


そういう訳でみょうじ家の車は神奈川に向かっている。や、もう神奈川には入ったのかな?出発前に教えてもらった到着時刻がもうすぐだから、そろそろの筈。




20110824

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