沙樹に触れていると、心から安心した。
柔らかくて小さな体を抱き締めて肩に顔を埋めると、ふんわりといい匂いがした。
「正臣は甘えんぼさんだね」
「悪いかよ」
「悪いなんて私言ってないよ」
沙樹の温もり、声、匂い、仕草。全てに。
「臨也さんから連絡こないね」
「刺されてんだろ今頃」
肩を揺らして笑う沙樹。
少し前まではこんな風に笑い合えたりできなかった。沙樹は無理してでも笑っていてくれたが、俺が弱いばかりに笑い返してやる事も出来なかった。
「正臣、こっち向いて」
「嫌だ」
今の自分の顔は酷い気がした。もう、と言って溜め息をつく沙樹の首に両腕を回してすがりつく。
「沙樹、好きだ」
「…どうしたのいきなり」
「思ったから言っただけ」
変な正臣、と沙樹がまたひとつ笑う。その声も心地が良かった。
「そんなの、知ってるよ」
俺を否定しない相手。沙樹は俺のすべてを受け入れてくれる。俺の居場所はここにある。そう考えたら目頭が熱くなった。
「正臣が今何を考えてるか、当ててみようか?」
体を離して顔を覗き込んでくる沙樹は、意地悪い表情を浮かべていた。この顔をしているときの沙樹は、正直苦手だ。俺の心の奥を見透かしているようでとても逆らえない。
「正臣の居場所は、私の中だけにあるよ」
コイツの真っ直ぐな瞳の前では強がる事も忘れちまう。
「泣いてるの?正臣」
頬を包む沙樹の手の温かさに、涙が溢れた。

20120817 / ちいさなふたり
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