夕方から雨になりますので、折り畳み傘を持ってお出かけ下さい。
天気予報が当たった。校舎から出ると雨が降っていた。お気に入りの傘を鞄から取り出して空に向かって開くと、綺麗な桃色が視界を埋めつくした。私の好きな色。大好きなあの人の髪の色に似ているこの色。髪がまとまらない憂鬱な雨の日もこれを使うようになってから嫌いじゃなくなった。その傘を手に校舎から出る。傘の布に当たる雨の音が何だか心地いい。足元で水がぱちゃぱちゃと音を立てている。ふと顔を上げると、傘越しに大好きな人の影が見えた。見間違えるはずもない、桃色のおさげを垂らした後ろ姿。どくりと心臓が高鳴った。そして隣には見知らぬ女の子。楽しげに笑い合う二人の姿。きゅうと胸が締め付けられる。私の前を歩く彼がふと私に気付いて、一瞬だけ視線が交わった。その瞬間だけはまるで世界に二人しか存在していないかのように静かになった気がした。しかしすぐに目を背けられ、校門を出て二人は姿を消した。彼は遊びの激しい人だと知っていた。でも大好きだった。足元の水溜まりにばしゃりと足を突っ込む。大きく飛沫の上がった水は私のローファーを濡らした。なぜそこに居るのが私じゃないのなんて、元彼に未練たらたらな私の。今の頬のように。

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