次の日の日曜。

「…」
今日は名前と土方のヤローがデートする日だ。もう昼はとっくに過ぎている。今頃仲良くやってるんだろうか。もうアイツとは前のようにはやれないだろうか。そう考えてばかりの俺は何をする気にもなれず、ただ家にいて無駄な休日を過ごしていた。
日も落ち始めた頃。朝から何も食べていないせいか腹が減り、コンビニに行くことにした。近くだからスウェットでもいいかと、携帯と財布を持ってそのまま家を出る。
そして近所の公園に差し掛かった時、いる筈のない姿を隅のベンチに見つけて目を見開いた。名前だ。なぜこんな所にいるのかとか、土方はどうしたんだとか、色々なことを考えたが一番気になるのは、
「なに、泣いてんだ…」
小さな肩を震わせて、何かを我慢するように静かに泣いていた。今すぐに行って抱きしめてやりたい。昨日のことを考えるとそれも出来なかった。名前はやはり、俺に会うのはもう嫌だろう。しかし放っておくわけにはいかない。名前が放っておけと言えば大人しく引き下がろうと決めて、俺は彼女に歩み寄った。
俺の足音に気付き顔を上げる名前。涙で顔が濡れている。
「そう、ご」
話しかけるきっかけにと、近くにあった自動販売機で買った午後ティーを無言で差し出す。たしか名前はこれが好きだと言っていた気がする。
すると名前はそれを少しみた後、素直に受け取った。とりあえず嫌がられなかったことに安堵する。
「ありがとう」
ずび、と鼻を啜る音と共に聞こえた声に、ああと言いながら隣に腰掛けた。
「…」
「…」
「…もうデートは終わったのか?」
言ってから後悔した。もっと他に言い方もあっただろうと。しかし名前は、それを咎める事もしないまま、うんと答えた。
「今日、ね。デートなんかじゃ、なかった、よ」
鼻を啜りながら一言一言ゆっくりと話し出す名前。
「、なんか、ね。ミツバちゃんの誕生日プレゼント、一緒に選んでくれって」
その言葉に俺は土方の野郎に本気で殺意が沸いた。しかし名前の片思いだ、アイツが悪い訳ではない。
「ミツバちゃんが、すきなんだって。土方くん」
知らなかったよ、とまた鼻を啜る。ちらりと名前を見れば、目に溜まる涙を落とさないように堪えていた。そして名前も俺を見て、小さく笑った。
「失恋しちったよ、」
その表情をとても見ていられなくて、壊れてしまいそうで。勢いのままに抱きしめた。また嫌がられてしまうかもとそうした後に考えたが、なりふり構っていられなかった。
「そ、」
「笑ってんじゃねーや」
「…そーご」
「辛いんだろ」
「、」
「…泣き顔、見ねぇでいてやるから」
泣け、言ったのと同時に、耳元で名前がうわあんと泣き出した。俺も泣きたくなった。


「ごめんね、総悟」
泣きじゃくってだいぶ落ち着いた頃、恥ずかしそうに名前が言った。
「別に」
「総悟が居てくれてよかった」
コイツはその台詞が俺にとってどんなに重いかきっと分かっていないいんだろうが、嫌な気はしなかった。
「あ、でも昨日みたいなことまたしたら怒るからね!」
「、悪かったな」
今誤ったからもういい、と名前はペットボトルに口をつけた。どうやら少しは吹っ切れたようだ。
「あーあ、わたしの恋、短かったな」
「男見る目ないからでィ」
目の前にこんなにいい男がいるってのに、と続ければ。名前は眉を下げて笑った。
「なにそれ、ばか総悟」
そう言うコイツの顔を見てたら、今はもう全てがどうでもいいかと思った。俺の恋はまだまだ続きそうだ。
「お前泣き顔もブスなんだから、せめてそうやって笑っとけよ」

20100225 / 男見る目ないからだよ
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