「、ん」
窓から朝日が射して、その眩しさで私は重たい瞼を上げた。ぼんやりとした視界で見回すと太公望様が目の前で肘をついて私を見下ろしていたるのが目に入って、驚いて一気に頭が覚醒する。
「やっと起きたか」
爽やかな笑みでそう言われてしまえば何だか恥ずかしくなってしまって、私は肩に掛かっていたシーツを鼻まで持ち上げた。
「おはよう、ございます」
腰までしかシーツの掛かっていない太公望様の上半身は惜しげもなく晒されていて、正直目のやりどころに困ってしまう。
「うむ、おはよう。ってお主なに隠れとんのじゃ」
「だ、だって、なんだか恥ずかしくて」
ぐいぐいとシーツを引っ張る彼に抵抗して、私は頭まですっぽりと被った。すると彼はそのシーツを捲って一緒に中に入ってくる。見上げると徐に額を合わせられ、太公望様の顔が間近に迫った。
「昨夜はあんな姿を見せておいて、何を言っておる」
その言葉にかああと顔が熱くなる。顔を逸らそうとするも、顎を持たれて上を向かされた。するとさっきよりも近くにきていた太公望様の顔に驚く間に唇を奪われた。啄ばむように唇を吸われて離れる。
「ん、」
昨夜とはまた違う柔らかい口付けに、ただでさえ寝起きだった頭が更に蕩けてしまった。そして両頬を包まれ顔中に口付けられる。くすぐったくて肩を竦めると太公望様がくすりと笑った。
「ほんっとに、お主は可愛いのう」
「、太公望様だって、格好いいです」
そしていよいよ恥ずかしくなって、顔を隠すように太公望様の胸に顔を埋めた。(しかし彼が裸だったのを思い出してもっと恥ずかしくなってしまったけど)すると彼の両腕がぎゅうと抱きしめてくれて、胸の中がほっこりと温かくなった。
「名前」
不意に名前を呼ばれて顔を上げると、そこにはとても穏やかに微笑む彼。それきり、彼はなにも言わなかった。
「太公望、様?」
ただ柔らかな視線で私を見詰める彼に、なんだか不安になってしまった。この笑みの裏に、とてつもない悲しみが秘められている気がして。
「っ、」
徐に彼の身体を抱きしめた。今はただ、太公望様が隣に居ることだけを、ただ噛み締めたくて。

20100615 / きみがとなりにいる
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